2008 Fiscal Year Annual Research Report
喘息と慢性閉塞性肺疾患との共通病態の解明-分子病態に基づく新たな分類を目指して-
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19590876
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
檜澤 伸之 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (00301896)
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Keywords | 喘息 / COPD / オランダ仮説 / 組織因子 / 組織傷害 |
Research Abstract |
気管支喘息とCOPDは一般にその病因、病態、臨床像は異なるが、実際の臨床の場では両者の徴候がオーバーラップした患者の鑑別は必ずしも容易ではない。さらに喘息とCOPDとはいずれも種々の外来因子(アレルゲン、喫煙、ウイルスなど)に肺組繊が過剰に反応する病態、すなわち気道組綴の傷害やストレスに対する感受性、反応性が元進し、気道炎症やリモデリングが起こり易いという共通病態に立脚した症候群であり、両疾患は単に表現型の違いを見ているに過ぎないとの考え方もある(オランダ仮説)。組綴因子(Tissuefactor;TF)は気道上皮細胞、肺胞上皮細胞やマクロファージなど、肺において幅広くその発現が謬められ、炎症や酸化ストレスなどによって気道組織に傷害やストレスが加わることで、さらにその発現が亢進する。気管支喘息やCOPDの肺局所においても、TFによる凝固活性が亢進していることが知られている。TF遺伝子のプロモーター領域にはTFの転写活性の多寡に影響を与える一塩基変異が存在する(-603A>G)。これまでに対立遺伝子-603Gは-603Aに比べTF遺伝子の転写活性が亢進すること、血清中TF高値と関連すること、さらには心筋梗塞や静脈血栓症の発症リスクを上昇させることが報告されている。本研究ではこの対立遺伝子-603Gが喘息やCOPDの発症や病態にどのような影響を与えているのかを遺伝疫学的に検討した。まず437名の喘息患者と389名の健常人を用いた患者対象研究において、喘息発症と有意な関連を認めた(p<0.05)。引き続き、独立したサンプル(745名の健常人、343名の喘息患者)において同様の検討を試みたところ、全く同様の傾向が認められ、すべてのサンプルの検討から特に20歳以上で発症してくる喘息と-603Gとの間に強い遺伝的関連が認められた(p<0.01)。一方300名のCOPD愚者を用いた検討では、対立遺伝子-603Gのホモ接合体では、より強い肺気腫病変が認められた。これらの検討からTF遺伝子は気管支喘息とCOPDとの両者に有意な遺伝的な影響を与えている可能性が示唆された。
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