2008 Fiscal Year Annual Research Report
上皮成長因子受容体遺伝子改変マウスを利用した肺癌化学予防に関する基礎的研究
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19590895
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
木浦 勝行 Okayama University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (10243502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧川 奈義夫 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (60325107)
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Keywords | 肺癌 / 肺腺癌 / 上皮成長因子受容体 / 血管内皮細胞成長因子受容体 / 分子標的化学予防 / ゲフィチニブ / ZD6474 / 遺伝子改変マウス |
Research Abstract |
肺癌の粗死亡数は増加しているが、喫煙率の低下に伴い年齢調整死亡率は1995年より低下しつある。喫煙の関与しない肺癌は男性で30%、女性で70%は非喫煙者である。今後喫煙に関与の少ない肺癌の病因追求とともにそれを予防する本研究は大きな意味を持つ。 1)SP-CプロモーターによりExon19の欠失delE748-A752を肺のみに過剰発現させたマウスEgfr遺伝子改変マウスを樹立した(国内特許申請中,2007年米国癌学会で発表,Cance Science受理)。この遺伝子改変マウスは5-6週で多発性の肺腺癌が出現し、14週前後で腫瘍死する。肺のみで欠失EGFRの過剰発現が認められた。肺の腺癌組織ではpEGFR、PCNA、TTF-1の過剰発現が認められた。先行研究が米国ダナファーバー癌研究所、メモリアルスーロンケタリング癌研究所から発表されている。二つの遺伝子改変マウスはともにテトラサイクリンのスイッチモデルを使用しており、腫瘍を惹起するためにはテトラサイクリンを投与し続けなければならないため、テトラサイクリン自体の抗腫瘍効果、テトラサイクリンと化学予防薬との相互反応の問題があり本研究には不向きである。 2)同様にSP-CプロモーターによりヒトL858R点突然変異遺伝子改変マウスを作製した。この遺伝子改変マウスも5-6週で多発性の肺腺癌が出現し、30週前後で腫瘍死する。EGFR遺伝子改変マウスの6週令からゲフィチニブ(5mg/kg/5日/週)を経口投与すると30週以上にわたり腫瘍の発生を完全に抑制した(2009年米国癌学会ミニシンポジウムで発表、同時に若手奨励賞を受賞しており、現在Cancer ResでRevise中)。 3)ヒトL858R遺伝子改変マウスは早期にVEGFRのリン酸化認められることを発見した。ZD6474はEGFRのチロシンキナーゼとVEGFRのチロシンキナーゼを二つの分子を同時に阻害する低分子化合物である。ZD6474(5mg/kg/5日/週)を遺伝子改変マウスに6週令から経口投与すると同様に腫瘍の発生を完全に抑制した(2009年4月米国癌学会ミニシンポジウムで発表した)。 上記、EGFRの関与した発癌はゲフィチニブ、ZD6474の分子標的薬により腫瘍の発生を完全に抑制し、肺腺癌の分子生物学的発生機序に従いその分子標的化学予防を行うという新しい概念を提唱した。
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