Research Abstract |
本研究の目的は,肺癌において最も一般的に認められる縦隔リンパ節転移を抑制する治療法はないかを検証することである.その手段として,癌転移抑制遺伝子として知られるMRP-1/CD9,KAI-1/CD82の遺伝子治療,転移に関係するとされるムチン関連抗原に対する抗体療法,さらに抗腫瘍効果をうたわれるH2受容体拮抗薬(シメチジン)の投与の3つを候補として挙げ,動物モデルにおけるこれらの効果を観察することを予定としていた.本年度はまず,癌転移抑制遺伝子として知られるMRP-1/CD9,KAI-1/CD82のアデノウィルスベクター作製に取り組み,これに成功した.さらに,Lewis lung carcinoma(LLC)細胞を肺へ同所移植したC57BL/6マウスに対して,これらのアデノウィルスベクターを利用した遺伝子治療を行い,縦隔リンパ節転移の程度を検証する実験を実施した.MRP-1/CD9,KAI-1/CD82の遺伝子導入により,原発巣類似の腫瘍組織のサイズには変化を与えないが,縦隔リンパ節への転移が著明に抑制されることが明らかとなった.この実験に加えて,同じLLC細胞を肺へ同所移植したマウスに対して,シメチジンを連日投与することで,縦隔リンパ節への転移の程度がどのように変化するかを検証する実験も行った.シメチジンの連日投与にて,原発巣類似の腫瘍組織のサイズには変化を与えないが,縦隔リンパ節への転移の程度が,シメチジンの用量依存的に軽減できる可能性を示唆する結果が得られた.この結果については,統計学的な有意差を持つものであるかどうかを再検する必要があり,今後再検予定である.
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