Research Abstract |
本研究の目的は,肺癌において最も一般的に認められる縦隔リンパ節転移を抑制する治療法はないかを検証することである.その手段として,癌転移抑制遺伝子として知られるMRP-1/CD9, KAI-1/CD82の遺伝子治療,転移に関係するとされるムチン関連抗原に対する抗体療法,さらに抗腫瘍効果をうたわれるH2受容体拮抗薬(シメチジン)の投与の3つを候補として挙げ,動物モデルにおけるこれらの効果を観察することを予定としていた.昨年, MRP-1/CD9, KAI-1/CD82の遺伝子導入により,原発巣類似の腫瘍組織のサイズには変化を与えないが,縦隔リンパ節への転移が著明に抑制されることを明らかとした.平成20年度は,シメチジンによる縦隔リンパ節転移抑制作用を中心に検証した.平成19年度の予備実験ではシメチジンの連日投与にて,原発巣類似の腫瘍組織のサイズには変化を与えないが,縦隔リンパ節への転移の程度が,シメチジンの用量依存的に軽減できる可能性を示唆する結果が得られていたのであるが,本年度3回の実験を行った結果は一定の方向性を示すものとはならず,最終的に,シメチジンに縦隔リンパ節転移抑制作用を認めるとは言いがたいと結論づけた.転移に関係するムチン関連抗原としてKL-6を対象とし,KL-6高発現細胞であるヒト肺癌細胞株であるPC3をヌードマウスへ同所移植することを試みたが,残念ながら,生着しないことが判明し,同所移植肺癌モデルの作製自体が困難であることが判明した.
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