Research Abstract |
胸膜中皮腫は,早期診断が困難な上に化学療法や放射線治療に対する感受性が低いためその予後は極めて不良であり,有効な治療法の開発が急務である。胸膜中皮腫に対する有効な分子標的治療を確立すべく,本年度はVEGF阻害薬として抗VEGF抗体を用い,抗癌剤との併用効果について検討を行い,下記の成果を得た。 胸膜中皮腫細胞株E且MES-10はVEGFを過剰発現していたが,in vitroの条件下では抗VEGF抗体ベバシズマブはEHMES-10の増殖に変化を与えなかった。ペメトレキセドは,2007年1月に胸膜中皮腫にはじめて認可された抗癌剤であるが,ペメトレキセドは用量依存性にEHMES-10の増殖を抑制したものの,ベバシズマブを併用しても増殖抑制効果は増強されなかった。 SCIDマウスを用いた同所移植モデルにおいて,EHMES-10は胸腔内腫瘍と大量の血性胸水を形成した。ベバシズマブは単独でも胸腔内腫瘍および血性胸水形成を抑制した。組織学的にはベバシズマブ治療により腫瘍内血管密度が低下し増殖細胞数が著明に減少していた。ペメトレキセドも単独で胸腔内腫瘍および血性胸水形成を抑制したが,両者を併用した場合さらに治療効果が増強された。両者の併用効果は,腫瘍においてはVEGFにより間質圧が上昇し抗癌剤移行性が低下しているが,ベバシズマブによりVEGFが中和された結果問質圧が正常化し抗癌剤であるペメトレキセドの腫瘍移行性が高まり,腫瘍増殖抑制効果が増強されたものと考えられた。以上め成果をまとめClin Cancer Resに投稿し受理された。 さらに,VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害薬(ZD6474)が,RETのチロシンリン酸化を阻害し,EHMES-10細胞の増殖を直接抑制することも明らかにした。来年度は,RETの下流のシグチル伝達に及ぼすZD6474の影響を詳細に解析する予定である。
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