2008 Fiscal Year Annual Research Report
胸膜中皮腫に著効を示すVEGF受容体阻害薬の真の標的分子同定と治療への応用
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19590900
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
矢野 聖二 Kanazawa University, がん研究所, 教授 (30294672)
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Keywords | 胸膜中皮腫 / 血管新生 / 同所移植モデル / RET / チロシンキナーゼ阻害薬 / VEGF / 胸水 / 分子標的治療 |
Research Abstract |
胸膜中皮腫はアスベスト暴露により誘発される予後不良の悪性疾患で、有効な分子標的治療の開発が急務の課題である。我々はVEGF受容体およびEGFRに対するチロシンキナーゼ阻害薬であるVandetanib(ZD6474)がヒト胸膜中皮腫細胞株EHMES-10に対し、劇的に増殖を抑制することを見出した。しかし、EHMES-10は機能的VEGF受容体を発現しておらず、抗VEGF抗体や抗VEGF受容体抗体、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬が全く抗腫瘍効果を示さなかったことから、VandetanibはVEGF受容体やEGFRとは全く別のシグナル伝達経路を阻害して殺細胞効果を示すことが示唆され、本研究を立案した。 本研究では、EHMES-10においてチロシンキナーゼ活性を有した蛋白(RET)が活性型変異の結果恒常的にリン酸化されており、RETに対するsiRNAによりその増殖が抑制されること、Vandetanibがそのリン酸化を阻害しEHMES-10に対し殺細胞活性を示すことを明らかにした。また、EHMES-10をSCIDマウスの胸腔内に移植する同所移植モデルを用い、Vandetanib治療が用量依存的にEHMES-10による胸腔内腫瘤形成および胸水形成を抑制し、生存期間を有意に延長することを明らかにした。さらには、Vandetanib治療は血管内皮細胞のアポトーシスを誘導し腫瘍内血管新生を抑制する効果も併せ持っていることを示した。 以上より、VEGF受容体阻害薬であるVandetanibは、RETが活性化している胸膜中皮腫に対してRETからのシグナル伝達阻害とVEGF依存性血管新生の阻害の2つの機序で作用し、強力な新規分指標的治療薬となる可能性が示唆された。
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Research Products
(12 results)