2009 Fiscal Year Annual Research Report
16番染色体長腕に連鎖する優性遺伝性脊髄小脳変性症の分子遺伝学的研究
Project/Area Number |
19590985
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉田 邦広 Shinshu University, 医学系研究科, 准教授 (90242693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 修一 信州大学, 医学部, 教授 (60135134)
松本 直通 横浜市立大学, 医学系研究科, 教授 (80325638)
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Keywords | 脊髄小脳失調症31型 / 挿入変異 / 5塩基繰り返し配列 |
Research Abstract |
16番染色体長腕に連鎖する優性遺伝性脊髄小脳変性症の病因として16q22.1領域に特異な5塩基繰り返し配列を有する挿入配列が同定され、SCA31と命名された(Sato et al.Am J Hum Genet 85 : 1-14, 2009)。SCA31は本邦の優性遺伝性の脊髄小脳変性症のおよそ8-17%を占める主要病型であるが、長野県では約42%を占める最頻の病型である。申請者らはこれまでに集積した長野県内の71家系94名のSCA31患者について、挿入配列の解析を行った。94名すべての患者で挿入配列が確認され、そのサイズは2.6~3.7kbに分布していた。挿入配列のサイズと発症年齢は緩やかな逆相関を示した。一方、臨床症候や発症後の小脳失調の進行度は挿入配列のサイズとは関連なく、一様と考えられた。405名の健常者に対して、挿入配列の有無を調べたところ3名で挿入配列が確認され、そのサイズは約1.0~3.5kbであった。直接塩基配列決定法およびサザンブロット法を用いた解析では、病因と考えられる挿入配列は(TGGAA)および(TAGAA)の5塩基繰り返し配列を有するのに対して、健常者で見られた挿入配列にはこれらの5塩基繰り返し配列が見られなかった。以上から、当該領域の挿入配列は健常者でも稀ながら見られること(1%以下)、健常者の挿入配列は概してSCA31患者のそれに比べてサイズが短いが、挿入配列のサイズのみでは病的かどうかが見極められないこと、病的な挿入配列には(TGGAA)および(TAGAA)の5塩基繰り返し配列が存在すること、が示唆された。すなわちSCA31の発症機序を考えるにあたっては、挿入変異の位置やサイズのよる効果よりも挿入内の塩基配列-(TGGAA)および(TAGAA)の5塩基繰り返し配列-がより重要な要因であることが示唆された。 さらに長野県内3ヶ所の集積地ごとに患者集団での挿入配列のサイズ、(TGGAA)繰り返し配列の上流にある(TAGAA)の繰り返し数が比較的均一であり、他の集積地の患者集団とは明らかに異なっていた。このことから集団遺伝学的にもSCA31が強い地域集積性および均一性を有する疾患であることが示された。
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