2007 Fiscal Year Annual Research Report
Tdp1ノックアウトマウスを用いた神経変性機構の解明
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19591001
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
高嶋 博 Kagoshima University, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (80372803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有村 公良 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (20159510)
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Keywords | 脊髄小脳変性症 / ニューロパチー / Tdp1 / SCAN1 / DNA修復 / 神経変性 / SSBR / マウスモデル |
Research Abstract |
TDP1遺伝子異常により発症するニューロパチーと小脳失調を示す疾患(SCAN1)では、脊髄前角細胞、プルキンエ細胞などの大型の神経細胞の変性が推定されている。TDP1は、DNAの転写や複製時のDNAの修復機構の酵素で、特にSingle strand break repair(SSBR)一員として働く。他にも類似疾患でDNA修復と神経変性を来す類似疾患が報告されており、この関連性を探るため、今回、TDP1ノックアウトマウスモデルの解析およびSCAN1患者のTDP1遺伝子変異(H493R)の特殊性について検討した。PO, P270期のノックアウトマウスでは、表現型および組織学的にも、神経細胞に明らかな異常は認めていない。また、ノックアウトモデルはコントロールに比し、CPT-11, Bleomycinなど抗ガン剤に明らかに脆弱であった。SCAN1患者皮膚培養細胞へのcamptothecin(CPT)の投与ではSCAN1患者においてTDP1H493R-DNA complexの増加を認めた。alkaline comet assayで患者遺伝子異常H493RのDNA損傷への影響を調べたが、ノックアウトマウス由来細胞にH493R TDP1を発現させることにより、CPT投与時にmean comet momentの増加を認めたことより、SSBが蓄積していることが示唆された。我々がTDP1の異常が、SCAN1の原因となることを報告して以来、H493R以外の遺伝子異常の症例は報告されていない。それゆえ、我々はTDP1 H493Rが特殊なnegative/toxicな作用を持つのではないかと考え検討した。実際、Tdp1ノックアウトマウスモデルにおいては長期間明らかな異常兆候が見いだせず、loss-of-functionのみでは明らかな発症はみられなかった。一方、SSBR阻害の抗癌剤に対しては明らかな過敏性があり、発症はしないもののノックアウトマウスはSSBR systemの問題があり、潜在的な異常があることは確認できた。comet assayでは、TDP1 H493Rの存在がSSBの蓄積を加速させることを確認した。SCAN1はこの酵素活性の低下という1面と、TDP1 H493Rが長くDNAに結合しDNA修復を阻害するという特殊な異常が重なることにより、発症することが推定された。このような遺伝子メカニズムを持つ疾患はほとんど報告がない。本研究では、ニューロパチーや小脳失調症の病態の解明だけでなく、新しい遺伝子メカニズムの可能性も示した。
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