Research Abstract |
(目的・方法)脊髄小脳変性症に対し,運動野に反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を行うことで,失調症が改善する報告があるが,画期的な成果を得るには至っていない。rTMSは脳皮質のごく狭く,浅い領域の脳機能を抑制するため,刺激部位の選定が極めて重要である。小脳は大脳皮質運動関連野と回路を形成し,回路内で機能亢進している部位を磁気刺激すると,効果が大きいことが予想されるが,小脳障害による回路内の活動変化は過去検討されておらず,rTMSに最適な刺激部位は不明である。我々は機能的MRI(fMRi),運動課題およびネットワーク解析を用いて,小脳-大脳運動皮質回路および大脳基底核運動回路の機能変化を,非侵襲的にヒトで解析する方法を,世界で初めて開発した。本年度は脊髄小脳変性症患者7例(SCA6とCCAの小脳のみ障害されるタイプ)を対象としてこの方法を用いて, fMRIによる脊髄小脳変性症の病態モデルの作成を試みた。(結果)脊髄小脳変性症患者では,老年健常人と比較して,大脳基底核運動回路の機能連関の亢進を認め,特に運動前野一被殻間で亢進していた。小脳-大脳運動皮質回路の機能連関は低下していた。(意義-重要性)基底核障害モデル(パーキンソン病)では,小脳-大脳運動皮質回路の機能連関が亢進したことから,脊髄小脳変性症では大脳基底核運動回路の機能連関の亢進は予想されていた。しかし,我々の課題では健常人において補足運動野-被殻-大脳運動野間の機能連関が亢進していたが,脊髄小脳変性症で運動前野一被殻間で亢進していた点が,新しい発見であった。rTMSに最適な刺激部位は,補足運動野と予想していたが,今回の結果より運動前野の可能性も出てきた。fMRIで信頼できる結果を得るには最低12例の結果が必要であるので,本年度中にモデルを形成し,補足運動野刺激,および運動前野刺激のrTMSを行う予定である。
|