2007 Fiscal Year Annual Research Report
筋萎縮性側索硬化症と前頭側頭型認知症の脳に蓄積する核内蛋白質の解析と病態の解明
Project/Area Number |
19591024
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
新井 哲明 Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research, 東京都精神医学総合研究所, 研究員 (90291145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 成人 東京都精神医学総合研究所, 副参研究員 (10251232)
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Keywords | 認知症 / 封入体 / 神経変性疾患 / 運動障害 / リン酸化 / 人格変化 |
Research Abstract |
2006年、我々は、前頭側頭葉変性症(Frontotemporal lobar degeneration:FTLD)と筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis:ALS)の患者脳に出現する特徴的な病理構造物であるユビキチン陽性神経細胞内封入体の主要構成蛋成分として核内蛋白のTDP-43を同定した。これらの疾患の患者脳に蓄積したTDP-43は異常なリン酸化を受けているが、その病的意義は不明であり、リン酸化部位も明らかにされていない。これらを明らかにするため、リン酸化TDP-43を特異的に認識するポリクローナル抗体を作製し、剖検脳を用いた免疫組織化学的・生化学的解析を行った。方法は、TDP-43中に存在する56ヶ所のセリン/スレオニン部位中36ヶ所を選んでリン酸化ペプチドを作製し、ウサギに免疫した。血清中の抗体価およびその特異性について、ELISAおよび患者剖検脳を用いた免疫組織化学・生化学的検討により評価した。その結果、TDP-43のC末端側のリン酸化ペプチドに対する抗体は、FTLDおよびALSの脊髄に出現する神経細胞内封入体を陽性に染色したが、神経細胞核は染色しなかった。これらの抗体で認識される異常構造の数は、抗ユビキチン抗体およびリン酸化非依存性抗TDP-43抗体を用いた免疫染色によるものより多かった。両疾患の剖検脳から調製したサルコシル不溶性画分の免疫プロットでは、45kDaと25kDaのバンドおよびスメァが陽性を示し、これらの免疫反応はサンプルの脱リン酸化により消失した。以上の結果から、作製した抗体は患者脳に蓄積した異常リン酸化TDP-43を特異的に認識することが証明された。TDP-43のC末端側のリン酸化は疾患特異的な現象であり、FTLDおよびALSの病理過程に重要な役割を果たしていると考えられた。
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