2007 Fiscal Year Annual Research Report
内皮細胞活性化因子S1Pを標的とした糖尿病合併症の実験的分子標的治療
Project/Area Number |
19591030
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
和田 龍一 Hirosaki University, 大学院・医学研究科, 准教授 (20260408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木橋 操六 弘前大学, 大学院・医学研究科, 教授 (40111231)
矢嶋 信久 弘前大学, 大学院・医学研究科, 助教 (30443980)
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Keywords | 糖尿病 / 細胞・組織 / 生体分子 / 生理活性 / 病理学 / スフィンゴ脂質 |
Research Abstract |
本研究は、糖尿病合併症の発症において重要な役割を果たしている細小血管障害の分子機序を明らかにし、新しい分子標的治療法を開発することである。特に、内皮細胞と血小板の相互作用の是正を目指し、血小板から放出され、内皮細胞の活性化にかかわるスフィンゴシン1リン酸(S1P)を分子標的の候補としている。今年度の研究では、糖尿病状態における血小板内のS1Pのシグナリングについて明らかにするため、S1Pを生成する酵素のスフィンゴシンキナーゼ(SPHK)と、S1PのレセプターであるS1P1について、糖尿病状態の血小板における発現について検討した。8週齢の雄性ラットにストレプトゾトシンにより糖尿病を誘発した。8週後、空腹時血糖が300mg/dl以上のものを糖尿病ラットとして実験に用いた。対照として同週齢の雄性ラットを用いた。ネンブタール麻酔下で左心室からヘパリン採血し、150Gで10分4℃で遠心、血小板豊富分画を分離し、さらに500Gで15分15℃で遠心して得られた血小板をヘパリン加リン酸緩衝液に浮遊させ洗浄血小板を調整した。洗浄血小板は、1%SDS/31.5mM Tris-HClで溶解し、Western blot用の試料を調整した。まず、血小板におけるS1P抗S1P1抗体と抗SPHK抗体を用いて、Western blot法による解析を行った。内因性のコントロールには、抗beta-actinを用い、糖尿病ラットと正常対照群とのS1P1とSPHKの発現の比較検討を行った。その結果、血小板のSPHKは、正常対照ラット群に比較して糖尿病ラット群で若干の発現の増加が認められた。一方、レセプターであるS1P1は、糖尿病ラット群で主常対照ラット群に比較して発現の低下が認められた。以上のことから、糖尿病の血小板では、S1Pの生成は増加し、レセプターを介したシグナル伝達機能は低下するという、機能的に不均衡な状態にあると考えられた。現在、血小板の活性化の指標となるCD62の発現について解析し、血小板の活性化状態とS1Pシグナル機能の相関について、また内皮細胞でのS1P機能状態について検討を進めている。
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