2008 Fiscal Year Annual Research Report
GLP-1とGIPによる協調的なインスリン分泌促進機構に関する研究
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19591032
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山田 祐一郎 Akita University, 医学部, 教授 (60283610)
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Keywords | 糖尿病 / シグナル伝達 / インクレチン |
Research Abstract |
消化管ホルモンであるGIP(gastric inhibitory polypeptide)やGLP-1(glucagon-like peptide-1)は、食事摂取後に血中レベルが上昇し、それぞれ膵β細胞に発現するGIP受容体やGLP-1受容体に作用することでインスリン分泌を促進するため、インクレチンと総称される。これらは相加的にインスリン分泌を促進するため、それぞれの消化管ホルモンの分泌動態を調節することでインスリン分泌を修飾し得る。日本人2型糖尿病患都で、食事(炭水化物56.5g、蛋白質18g、脂質18g)負荷後のホルモン血中レベルを測定すると、GIP上昇のピークは30分後であるのに比し、GLP-1のピークは60分後と遅く上昇の程度も軽微であり、GIP産生細胞が上部消化管、GLP-1産生細胞が下部消化管に存在する発現様式に合致した。次に、αグルコシダーゼ阻害薬であるmiglitolを2週間投与し、再び食事負荷試験を施行したところ、GIPの分泌は著明に低下したのに対し、GLP-1は60-180分後という時間帯で上昇することを明らかにした。miglitolは二糖から単糖への分解を阻害する薬物であり、これによってGIPやGLP-1の分泌動態が変わることは、食事摂取後のインクレチンの分泌には単糖が重要であることを示している。インクレチンは膵作用においてはいずれもインスリン分泌促進であるが、膵外作用ではGIPは脂肪細胞への作用から体重を増加させGLP-1は中枢神経系などへの作用から体重減少を来し、まったく逆に働く。したがって、GLP-1シグナルのみを活性化するGLP-1受容体作動薬、GIPとGLP-1のしずれのシグナルを活性化するDPP-IV(dipeptidyl peptidase-IV)阻害薬に加え、GIPシグナルを抑制しGLP-1シグナルを活性化するαグルコシダーゼ阻害薬は、いずれもインクレチン関連薬であり、2型糖尿病のインスリン分泌障害やインスリン抵抗性を考慮した治療薬の選択が必要であることを明らかにしている。
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