Research Abstract |
私は「OGR1受容体ファミリーが,血管内皮細胞,血管平滑筋細胞におけるpHセンサーとして機能し,動脈硬化症と関連した血管機能の制御に関与している」との仮説を立てている.本年度は,以下の結果を得た.1.血管細胞におけるOGR1ファミリーの機能解析:血管内皮細胞(HUVEC)ではGPR4の発現を観察している.そこで,GPR4特異的siRNAを用いてcAMP応答を解析した.その結果,siRNA処理により,pH低下に伴うcAMP産生量が減少した.すなわち,HUVECでは,細胞外液の酸性化に伴うcAMP産生がGPR4を介して引き起こされていることが明らかとなった.次に,OGR1受容体が細胞増殖応答に係わるかどうか,OGR1受容体に特異的なsiRNA,シクロオキシゲナーゼ阻害剤(インドメサシン)を用いて,ヒト血管平滑筋細胞(AoSMC)の細胞増殖応答(チミジンの取り込み応答)を解析した.PDGF刺激によってAoSMCのチミジンの取り込みは増加する.そして,細胞外液のpH低下に伴いその取り込みは抑制された.OGRlsiRNA,インドメサシンでAoSMCを処理するとこの抑制応答が,解除される傾向が観察された.しかしながら,その解除の程度は低い.2.摘出血管での張力測定:ラット,マウス大動脈平滑筋の張力は,細胞外pHの低下により低下する.この弛緩作用はインドメサシンによって減弱する傾向が観察された.しかしながら,その減弱の程度は低い.3.OGR1受容体ファミリー発現:マウスの血管平滑筋におけるOGR1ファミリーのmRNA発現量をrealtimeTaqManPCRで測定した.その結果,GPR4の発現が優位であることを見出した.また,週齢の違いによってGPR4発現の優位性は変化しなかった.
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