2007 Fiscal Year Annual Research Report
視床下部のオレキシン系がインスリン抵抗性を防御する機構の解明
Project/Area Number |
19591039
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
恒枝 宏史 University of Toyama, 大学院・医学薬学研究部, 准教授 (20332661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹岡 利安 富山大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (00272906)
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Keywords | オレキシン / インスリン抵抗性 / 糖代謝 / 視床下部 / プロテインキナーゼB / ノックアウトマウス / レプチン / 糖尿病 |
Research Abstract |
糖代謝調節に関わる末梢組織でのインスリン作用は視床下部性制御を受けているが、その詳細は不明である。視床下部には血糖センサーとして機能するオレキシンニューロンが存在し、摂食行動、覚醒レベルおよび生体のエネルギーバランスを調節しており、全身の糖代謝調節機構の統括因子である可能性が高い。そこでオレキシン欠損(KO)マウスを用いて、脳と末梢組織との臓器連関を介したインスリン作用の調節機構におけるオレキシンの役割を検討した。雄性オレキシンKOマウスは9ヶ月齢まで加齢すると、正常体重であるにも関わらず、耐糖能異常、インスリン感受性の低下に加え、高インスリン血症を示した。2および9ヶ月齢のKOマウスにインスリンを末梢および中枢投与すると、視床下部でのシグナルはインスリン受容体、Akt/プロテインキナーゼBおよびグリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK3β)において減弱した。浸透圧ポンプを用いてKOマウスの脳室内にオレキシンを2週間連続投与したがシグナルの異常は改善されず、より長期的なオレキシン欠損の影響であることが示された。一方、末梢組織では加齢したKOマウスにおいてのみAkt/GSK3βシグナルに異常が認められた。雌性KOマウスは同様のインスリンシグナルの異常を示したが、加齢に伴い肥満となり、高インスリン血症に加え高レプチン血症を呈した。しかも、高脂肪食負荷により雌性KOマウスのみ肥満し、著しい耐糖能異常およびインスリン抵抗性を示した。このように、長期間に及ぶオレキシンの欠損は視床下部でのインスリン作用不全を引き起こし、さらに末梢組織のインスリン抵抗性を増大させた。従って、オレキシンは、インスリン作用を調節するための脳と末梢組織の臓器連関における統合中枢としての役割を果たしており、加齢依存的なインスリン抵抗性に対する防御因子であると考えられる。
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Research Products
(1 results)