2008 Fiscal Year Annual Research Report
KATPチャネル遺伝子異常による糖尿病発症機序解明と薬剤反応性変化についての検討
Project/Area Number |
19591047
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長嶋 一昭 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (40324628)
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Keywords | 糖尿病 / 遺伝子 / 薬剤反応性 |
Research Abstract |
京都大学医学部附属病院および協力医療機関において、新生児糖尿病症例、新生児期に高血糖にて一時的にインスリン療法施行歴のある患者および家族歴濃厚な糖尿病患者においてインフォームドコンセント取得の上、採血・ゲノム抽出を行い、本年度はKATPチャネル遺伝子(Kir6.2遺伝子およびSUR1遺伝子)変異を有する症例を2症例同定した。同定された変異を有するヒトKir6.2遺伝子およびヒトSUR1遺伝子を発現ベクターに組み込み、哺乳動物細胞に発現させて、電気生理学的手法(パッチクランプ法)を用いて、各変異KATPチャネルにおける経口血糖降下薬(スルホニル尿素薬など)の薬剤反応性、膵β細胞内ATP濃度変化に対するATP感受性の変化および共焦点レーザー顕微鏡を用いた膵β細胞膜面へのKATPチャネル発現障害の有無に関して検討を行った。同じ遺伝子上であっても変異部位が異なれば、経口血糖降下薬に対する薬剤反応性、ATP感受性および膵β細胞膜面への発現障害の程度が異なることが確認された。これらの結果は、KATPチャネル遺伝子異常による糖尿病発症機序の理解に有益な知見であり、これまでインスリン療法が必須とされてきた新生児糖尿病症例に対する新たな治療選択肢(経口薬での治療)を提供する知見となる。また、同じ遺伝子上の変異でも、変異部位が異なることにより薬剤反応性の違いが生じることから、将来的には、処方前in vitro解析による各遺伝子変異部位に応じた事前薬効評価が可能となる可能性を示唆することから、これらの知見の集積は、今後、臨床的にも有用なものとなる可能性がある。
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