2007 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子MafAの安定性制御機構から膵島β細胞のグルコース応答メカニズムにせまる
Project/Area Number |
19591078
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
片岡 浩介 Nara Institute of Science and Technology, バイオサイエンス研究科, 准教授 (20262074)
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Keywords | 転写制御 / シグナル伝達 / 糖尿病 |
Research Abstract |
われわれの血糖値はごく狭い範囲に保たれている必要があり、それを司るインスリン遺伝子の転写はグルコース(血糖値)に応答して上昇するが、膵島β細胞がグルコースの濃度を感知するメカニズムはあきらかになっていない。本研究課題においては、血中グルコース濃度に応じたインスリン遺伝子発現の制御の中心的役割を担うことがあきらかなった膵島β細胞特異的転写制御因子であるMafAのタンパク質分解の制御の分子メカニズムを解析することによって、膵島β細胞の血糖感知システムの実体が何であるのかをあきらかにすることが目的である。 本年度は、MafAタンパク質を積極的に分解に導く因子の候補として同定したPA28γタンパク質との関連を探った。PA28γタンパク質は、7量体を形成して20Sプロテアソームに結合し、ペプチド基質に対するプロテアーゼ活性を上昇させることが知られているが、タンパク質の分解促進については、ユビキチン化を介さないとされているが、その機構は全く不明である。そこでまず、PA28γによるMafAの分解促進は、確かにプロテアソーム阻害剤によってキャンセルされることをあきらかにした。MafAは、N末端側の特定の5つのセリン・スレオニン残基がリン酸化されたときにのみ、特異的にPA28γによって分解が促進されることもわかった。この分解促進効果は、調べた限りにおいて他の転写因子に対しては見られず、MafAに特異的であることもあきらかにし、これまでに知られていない、まったく新しいタイプのタンパク質分解促進系である可能性を示した。 一方で、通常のユビキチン化を介したMafAの分解経路についても検討を行い、E3リガーゼの同定を候補アプローチによって試みているが、未だに同定には至っておらず、今後も検討を続ける。
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