2008 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子MafAの安定性制御機構から膵島β細胞のグルコース応答メカニズムにせまる
Project/Area Number |
19591078
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
片岡 浩介 Nara Institute of Science and Technology, バイオサイエンス研究科, 准教授 (20262074)
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Keywords | 転写制御 / シグナル伝達 / 糖尿病 |
Research Abstract |
血糖値はごく狭い範囲に保たれている必要があり、その恒常性を司るインスリン遺伝子の転写はグルコース(血糖値)に応答して上昇するが、膵島β細胞がグルコースの濃度を感知するメカニズムはあきらかになっていない。本研究課題においては、血中グルコース濃度に応じたインスリン遺伝子発現の制御の中心的役割を担うことがあきらかなった膵島β細胞特異的転写制御因子であるMafAのタンパク質分解の制御の分子メカニズムを解析することによって、膵島β細胞の血糖感知システムの実体が何であるのかをあきらかにすることが目的である。 昨年度までに、MafAタンパク質を積極的に分解に導く因子の候補として同定したPA28γタンパク質との関連を探り、MafAに対する分解促進がきわめて特異的であり、これまでに知られていない、まったく新しいタイプのタンパク質分解促進系であることを示した。 一方で本年度は、通常のユビキチン化を介したMafAの分解経路についても検討を行い、MafAのE3リガーゼの同定に成功した。このE3リガーゼはMafAタンパク質のGSK3によるリン酸化に依存して結合することから、PA28γと同様にグルコース感受システムの一部を構成している可能性が高い。以上の結果から、MafAのタンパク質分解はPA28γとこのE3リガーゼにより多重な制御を受けていることが判明した。これらの結果は、細胞のグルコース応答メカニズムの複雑さ巧妙さを示しており、また今後の展開への大きな手がかりである。
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