2008 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞の自己複製に関わる転写因子GATA-1とGATA-2の機能解析
Project/Area Number |
19591095
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
清水 律子 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (40226262)
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Keywords | 白血病 / 巨核球 / 転写因子 / GATA1 / ダウン症候群 / 一過性骨髄増殖性疾患 |
Research Abstract |
造血幹細胞が,自己複製をしながら特異的な性質を持った多系列の血液細胞に分化する過程では,遺伝子発現の特異的かつ精密な制御が必須である。その中で、GATA1はGATA2により発現誘導され,赤血球や巨核球の分化に必須な転写因子であることが知られている。マウスGata1遺伝子には,血液細胞特異的なGATA1発現に重要なIEエキソンと,精巣セルトリ細胞特異的なGATA1の発現に重要なITエキソンが存在するが,IEエキソン特異的なGata1遺伝子ノックダウンマウスでは,GATA1の発現低下による分化・増殖・アポトーシス統御の破綻により、未熟なc-KitCD71陽性の赤血球前駆細胞が蓄積し,高率に前赤芽球性白血病を発症する。一方、ダウン症候群患児に高率に発症する一過性骨髄増殖背疾患(TMD)や巨核芽球性白血病(AMKL)の芽球では、ほぼ全例にGATA1のアミノ末端領域を欠失したGATA1(△NT-GATA1)が発現している。本年度は、△NT-GATA1のみを発現する遺伝子改変マウスを作製し、TMDの発症には21番染色体トリソミーは必須ではなく、Gata1遺伝子の異常のみで病態を構築することができること、しかし、GATA1異常のみではAMKLは発症しないことを明らかにした。これらの解析から、GATA1の量的異常(発現量低下)と構造異常(アミノ末端欠失)が、それぞれ系列特異的(赤血球、巨核球)前駆細胞の異常蓄積を引き起こすこと(前白血病状態)、しかし、GATA1の単独異常では白血病を発症せず、いずれの場合も白血病発症さらなる遺伝子の異常が引き金となること(白血病の多段階発癌)を明らかにした。
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Research Products
(7 results)