2008 Fiscal Year Annual Research Report
Casファミリー蛋白質の関節リウマチ及び骨粗鬆症における病態生理学的意義の解析
Project/Area Number |
19591158
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 哲史 The University of Tokyo, 医科学研究所, 特任講師 (00396871)
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Keywords | Cas / インテグリン / 関節リウマチ / 骨粗鬆症 / 免疫学 / SHP-2 / コラーゲン関節炎 / Nck |
Research Abstract |
β1インテグリンは細胞接着、細胞遊走、細胞増殖、サイトカイン産生、細胞の生存シグナル等の様々生物学的機能を担っており、これらの過程において、接着シグナルを細胞内シグナルに変換するレセプターとして働く。一方、関節リウマチ(RA)の炎症反応にβ1インテグリンを介するT細胞の活性化やその後のT細胞遊走能の亢進が関与するという証拠が多数蓄積している。また、RA患者における滑膜細胞、滑液細胞や血管内皮細胞ではβ1インテグリンのリガンドであるブイブロネクチンやVCAM-1等の発現が高まっている事が報告されている。本研究は、それらの知見に基づき、我々が確立したCas-L分子について、以下の検討を行った。 1)Cas-L/NEDD9結合蛋白Nckのインテグリン由来シグナル及び生物学的意義:我々は、Cas-Lのチロシンリン酸化依存的に結合する分子として、SH2ドメインとSH3ドメインのみからなるアダプター蛋白質Nckと、SH2、ドメインを持つチロシンフォスファターゼであるSHP-2を同定した。我々は、Nckが、Cas-Lのチロシンリン酸化されたsubstrate domainにSH2ドメインを介して結合すること、T細胞において、Cas-Lがlipid raftに恒常的に一部存在し、TCR及びβ1インテグリン刺激によりNckがraft内でチロシンリン酸化されたCas-Lにリクルートされること、Cas-L欠損マウスの脾細胞を用いてNckのraftへの刺激依存性の移行の低下を見出した。また、RA滑膜患者検体において、Nck高発現細胞の炎症局所への浸潤が認められた。 2)Cas family遺伝子ノックアウトマウスと関節リウマチモデルマウス・骨粗鬆症モデルマウスとの交配による、関節リウマチ・骨粗鬆症におけるCas family遺伝子の病態生理学的意義の検討:Cas-L欠損マウスを用いてコラーゲン関節炎モデルマウスを作成し、関節リウマチの発症率・重症度を腫脹関節数とその程度によるスコアリングを行った。その結果、Cas-L欠損マウスにおいては、関節炎の発症は野生型マウスよりもやや早いものの、その重症度は有意に減少していた。さらに強いコラーゲン関節炎をおこすDBA/1 backgroundに遺伝的backgroundを変換して、Cas-L遺伝子の影響を解析するため、Cas-L欠損マウス(C57/B6)と、DBA/1野生型マウスとの交配を行っている。また、骨粗鬆症モデルマウス(OPG欠損マウス)と、同一バックグラウンドの野生型マウスを用いて、骨密度の評価を行い、OPG欠損マウスでは有意に骨密度の減少が確認できた。現在、OPG欠損マウスと、Cas-L欠損マウスの交配を行っており、Cas-L遺伝子の欠失による、骨密度の減少に対する影響を検討する予定である。
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Research Products
(9 results)