Research Abstract |
[目的]膠原病は原因不明の炎症性疾患であり,自己細胞成分に対する多彩な抗体産生を特徴とする.これら自己抗体は特定の臨床像と密接に関連し,診断や治療反応性,予後推定など臨床上有用であるばかりでなく,細胞内分子の構造と機能の解明にも役立つ.本研究では,全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスおよびSLE患者におけるヒストンに対する自己抗体と対応抗原エピトープを同定し自己抗体産生機序を解析し,SLEにおけるエピジェネティクスの病因的意義の追究を目的とした. [方法]SLE患者を対象とし,免疫沈降法,ELISA法,および免疫ブロット法を用い,血清中の抗ヒストンH1^0抗体,抗ヒストン(H2A, H2B, H3, H4)抗体,抗dsDNA抗体および抗ヌクレオソーム抗体を測定した. [結果および意義]ELISAによる抗ヌクレオソーム抗体はSLE123血清中112血清が陽性(陽性率91.1%)で,ヌクレオソームが主要な自己抗原であった.また,抗dsDNA抗体も高頻度であり,抗ヌクレオソーム抗体との間に強い相関が認められた.免疫ブロットによる自己抗体の検討では,H1とH2Bに対する自己抗体が高率で,一部はH3とも反応したが,H2AおよびH4との反応はまれであった.SLEモデルマウスにおける抗ヒストン抗体の主要なエピトープであるH1^0_<22-42>は,ヒトSLE患者血清中の抗ヒストン抗体では認識されず,ヒトSLE患者とSLEモデルマウスとのT細胞およびB細胞エピトープの詳細な比較の必要性が示された.
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