2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19591198
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
加藤 光広 Yamagata University, 医学部, 講師 (10292434)
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Keywords | 年齢依存性てんかん性脳症 / 大田原症候群 / ARX遺伝子 / ウエスト症候群 / 介在ニューロン / ポリアラニン病 |
Research Abstract |
大田原症候群は1976年に日本ではじめて報告・確立された代表的な年齢依存性てんかん性脳症であり, 新生児期に発症し, 乳児期にウエスト症候群に変化し重度の発達遅滞をきたす。大田原症候群は脳形成障害に合併することが多く, 症候性てんかんに分類され, 原因遺伝子の解析が遅れていた。私たちは, 2007年に世界で初めて大田原症候群の原因遺伝子(ARX)を明らかにした。ARX遺伝子はGABA作用性の大脳介在ニューロンの発生に関与し, 内部にポリアラニン配列を有し, アラニンの伸長数に応じ精神遅滞(2〜3残基追加)やウエスト症候群(7残基追加)をきたす。大田原症候群では, 既報告の伸長数よりも長い伸長変異(11残基追加)をみいだした。これにより大田原症候群が, 推測通り介在ニューロンの機能異常により生じることが証明された。ポリアラニンの伸長変異は, 長さに比例して転写抑制機能が増強する機能獲得変異であり, 年齢依存性の発症機序・病態が反復配列の伸長数の違いによることも明らかにされた。ARXに異常を認めなかった大田原症候群でさらに新規原因遺伝子探索を行い, アレイ解析により1例で微細欠失を認め, 候補遺伝子解析により13例中4例でSTXBP1遺伝子に新生変異を同定した。STXBP1はシナプス小胞の開口放出に関与するMUNC18-1蛋白の遺伝子であり, 神経伝達物質の分泌障害が大田原症候群の原因に関与していると考えられた。てんかんの原因としてこれまでイオンチャネルの遺伝子変異が多く報告されているが, シナプス小胞の開口放出障害という新しいてんかん発症機序を示唆する成果であり, 今後てんかんの病態解明, 治療戦略に対し新しい突破口を切り開くことができた。
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Research Products
(9 results)