2009 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺ホルモン欠乏による胎生期脳障害の病態解明に関する研究
Project/Area Number |
19591228
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 順庸 Kanazawa Medical University, 医学部, 講師 (60367472)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 仁志 金沢医科大学, 医学部, 助教 (20303224)
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Keywords | 甲状腺ホルモン輸送体(MCT8) / 胎児脳発達 / 甲状腺ホルモン / 乳酸 / ピルビン酸 |
Research Abstract |
本研究では、MCT8遺伝子変異を持つ症例の症状は胎児脳の甲状腺不足によるものという仮説を立て、以下の実験を行った。この変異を持つ個体は、重度の精神運動発達遅延を認め、多くの症例は寝たきりとなる。また体位変化に伴う下肢のジストニア様運動と部分てんかん発作を特徴とする。 前回報告後、さらに全国よりMCT8遺伝子症例を提供してもらい、3症例を追加した。PCRダイレクトシークエンスによって塩基配列を確認し、それぞれp.Lhe340Pro、c.del1648_1662、p.Phe273delの変異だった。甲状腺ホルモン輸送能の実験ではいずれも輸送能活性の低下を認めた。解析を行った7例を比較検討したところ、6例までに乳児期早期の一過性高乳酸血症を認めた(乳酸ピルビン酸比:25.1±7.7)。本疾患は精神運動発達遅延を主訴として受診され、ルーチン検査として乳酸、ピルビン酸が測定されることが多い。このことから、精神運動発達遅延の児において、高乳酸ピルビン酸比が確認された場合は、既存の鑑別疾患とともにMCT8遺伝子異常症を考慮する必要が示唆された。 また胎生早期の母体からの甲状腺ホルモンの影響に関する検討では、現時点で明らかな神経・精神症状を訴える症例は出現していない。一般的に広汎性発達障害や自閉症スペクトラムの発現は就学前までの観察が必要であり、今回の調査では少なくとも母体の甲状腺機能の低下によって、広汎性発達障害や自閉症スペクトラムの発症が促進されることはなかった。より年長児での広汎性発達障害や自閉症スペクトラムの発症頻度の差異については、いまだ不明である。
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