2007 Fiscal Year Annual Research Report
凝固第VIII因子活性化/不活化機構の解明と凝固/抗凝固療法の応用に関する研究
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19591264
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
野上 恵嗣 Nara Medical University, 医学部, 助教 (50326328)
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Keywords | 血液凝固 / 第VIII因子 / 活性化 / 不活化 / プラスミン / 結合部位 / 内因系因子 |
Research Abstract |
血液凝固第VIII因子(FVIII)は、欠乏では重篤出血(血友病A)を、増加では血栓形成を惹起するため、出血/血栓の相反する病態で重要である。凝固促進にはトロンビンによるFVIII活性化が、過凝固抑制には活性型プロテインCによる不活化が重要であるも不明な点も多い。従って本因子中心での凝固血栓形成やその抑制機序の解明は、血友病Aの治療戦略、血栓形成病態に応じた抗血栓凝固療法の発展に寄与する。従来の凝固研究は、内因系/外因系/凝固抑制系/線溶系に分けて展開してきたが、凝固過程は複数系が同時進行していく概念が最近支持されている。そこで我々は、今まで注目されていなかったFVIII活性化/不活化機構における線溶系プラスミン(Plm)の役割について新しい知見を得た。PlmはFVIII活性を非常に初期段階で約2倍上昇させ、その後速やかに低下させることが明らかになった。これはFVIIIと複合体形成するvon Willebrand因子存在下でも抑制されなかった。その作用を示すために、PlmはFVIIIの重鎖Lys^<36>、Arg^<336>、Arg^<372>、Arg^<740>を、軽鎖Arg^<1689>、Arg^<1721>を開裂し、特にArg^<372>、Arg^<336>開裂は重鎖が、またLys^<36>開裂は軽鎖が制御していた。PlmのFVIII開裂部位は活性型第X因子による開裂部位と一致していたが、PlmのArg^<336>開裂はArg^<372>開裂より遥かに速い点が異なっていた。次にPlmとFVIIIとの直接結合を示すために、活性部位をアンヒドロ化した不活型Plmを作製し、世界で初めてPlmとFVIIIの結合実験に成功した。その結果、PlmはFVIHのA2とA3の両ドメインに結合することが判明した。さらに、リコンビナントA2およびその変異株を作製し、A2ドメイン内の限局した結合部位の同定にも成功した。その結合部位は活性型IX因子の結合部位とも重複しており、凝固過程中でのPlmのFVIIIへの作用は、活性型IXa因子によって部分的に制御されていることも明らかになった。以上のように、FVIIIは内因系のみならず、線溶系のPlmのFVIIIに対する直接作用によっても制御されていることが判明した。
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Research Products
(16 results)