2008 Fiscal Year Annual Research Report
新規カルシウム反応性転写因子が表皮角化細胞の分化・増殖に果たす役割の解明
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19591296
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
川内 康弘 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (00272196)
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Keywords | YY1 / ケラチノサイト / 表皮 / 角化 |
Research Abstract |
本研究代表者は、転写因子YY1が表皮基底層特異的に発現し、上層の分化層では発現が無くなること、高分化特異的発現を示すロリクリンの発現を抑制すること、を報告した。本研究では、YY1がケラチノサイトの分化(角化)にどのように関わっているかを3D培養法を用いて解析した。 YY1が表皮基底層特異的に発現する転写因子YY1のcDNAを培養ケラチノサイトHaCaT細胞に細胞導入し、YY1を恒常的に強発現する細胞系列を樹立した。このYY1-HaCaTを単層培養し、その細胞増殖能をBrdU取り込みで評価したところ、コントロールと比べて有意に細胞増殖能が増加していた。さらにYY1-HaCaTを3D培養し、空気暴露により重層化、角化させ、YY1の恒常的強発現がその分化・増殖に与える影響について解析した。その結果、YY1-HaCaT細胞は、6〜8層にまで肥厚した表皮構造を形成し、コントロール(3〜5層)に比べて明らかに厚い尋常性乾癬様の表皮構造を形成した。また、YY1-HaCaT細胞は空気暴露による角化誘導がかからず、角化マーカーであるK1,K10,インボルクリン、フィラグリンの発現が抑制された。また、細胞周期マーカーであるKi67、サイクリンB、サイクリンDの発現も抑制され、逆に細胞周期抑制マーカーであるp21、p16の発現は増加していた。これらの結果は、YY1を恒常的に強発現するYY1-HaCaT細胞が未分化な基底細胞様のフェノタイプを維持していることを示しており、正常表皮において基底層特異的に発現する転写因子YY1が、ケラチノサイトの未分化状態の維持に重要な役割を果たしていることが強く示唆された。
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