2007 Fiscal Year Annual Research Report
扁桃体を介した情動ストレスの神経化学的機序から気分障害の病態・発症機序を解明する
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19591333
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井上 猛 Hokkaido University, 北海道大学病院, 講師 (70250438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 伸 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (60360905)
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Keywords | 気分障害 / 恐怖条件付け / SSRI / 抗不安作用 / ストレス / セロトニン受容体サブタイプ |
Research Abstract |
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は抗うつ薬として開発されたが、現在は様々な不安障害の治療にも第一選択薬として用いられてきている。本年度は不安の動物モデルを用いて、恐怖条件付けストレスに対するSSRIの抗不安作用の作用機序解明に関する研究を行った。 1)SSRIの抗不安作用をセロトニン(5-HT)合成阻害剤のPCPAが抑制し、5-HT_<1A>拮抗薬はむしろ増強した。その他の5-HT受容体サブタイプ(1B,1D,2A,2C,3,4,6,7)の拮抗薬はSSRIの抗不安作用を抑制しなかった。5-HT_<1A>拮抗薬による増強作用は5-HT作動性神経の起始核である縫線核5-HT_<1A>受容体遮断による細胞外5-HT濃度増加作用に基づくと解される。PCPAによる抑制作用はSSRIの抗不安作用が細胞外5-HT濃度増加を介していることを示しているが、5-HT_<1A>受容体を含めた様々な5-HT受容体サブタイプの拮抗でSSRIの抗不安作用が阻害されなかったため、SSRIの抗不安作用がどの5-HT受容体サブタイプを介しているかは未だ明らかではない。今後、今回検討していない5-HT受容体サブタイプの拮抗薬の効果を検討し、SSRIの抗不安作用に関与する5-HT受容体サブタイプを明らかにしていきたい。 2)SSRIの抗不安作用に関与する細胞内情報伝達系を明らかにする目的で、phosphodiestrase阻害剤、5α-reductase阻害剤をSSRIに併用し、SSRIの抗不安作用に対する影響を検討した。両薬剤ともにSSRIの抗不安作用には影響を及ぼさなかった。したがって、cAMPの減少、neurosteroid合成促進はSSRIの抗不安作用の作用機序の候補ではあるが、本研究の結果はこの可能性を支持する結果とはならなかった。
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