2008 Fiscal Year Annual Research Report
扁桃体を介して情動ストレスの神経化学的機序から気分障害の病態・発症機序を解明する。
Project/Area Number |
19591333
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井上 猛 Hokkaido University, 病院, 講師 (70250438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 伸 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (60360905)
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Keywords | 気分障害 / 恐怖条件付け / SSRI / 抗不安作用 / ストレス / 扁桃体 / CREB |
Research Abstract |
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は抗うつ薬として開発されたが、現在は様々な不安障害の治療にも第一選択薬として用いられてきている。本年度は不安の動物モデルを用いて、恐怖条件付けストレス(conditioned fear stress, CFS)に対するSSRIの抗不安作用の作用機序解明に関する研究を行った。 1)SSRIであるfluvoxamineと5-HT1Aアゴニストであるtandospironeの併用は、CFSにおいて相加的な抗不安作用を示した。Cyt P450阻害作用によりtandospironeの血中濃度は併用時に増加した。 2)新規抗うつ薬であるmirtazapineはCFSで抗不安作用を示し、その作用はα2受容体遮断作用を介している可能性が示唆された。またmirtazapineとSSRIとの併用は相加的な抗不安作用を示した。 3)SSRIはCFSの条件付けの前に投与しても、条件付け後のテスト前に投与しても、CFSによる不安行動を減弱する。しかし、最近注目されている恐怖記憶の再固定化には影響しなかった。 4)ラットの文脈的恐怖条件付けの消去過程における、6つ扁桃体亜核のCREBリン酸化について免疫組織化学的に検討した。文脈的恐怖条件付けによる恐怖発現により6つの亜核のうち外側、基底、内側、皮質核の4つの亜核でCREBリン酸化の亢進がみられた。しかし、6つの亜核にうち基底核のCREBリン酸化のみが消去過程に伴い低下した。本研究の結果は扁桃体基底核のCREBリン酸化が文脈的恐怖条件付けの消去過程と密接な関連を有することを示唆している。
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