2009 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症警告期の新しい診断法と早期治療法の開発:認知機能と脳機能画像による検討
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19591345
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
住吉 太幹 University of Toyama, 大学院・医学薬学研究部, 准教授 (80286062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 康弘 富山大学, 大学病院, 講師 (80242519)
鈴木 道雄 富山大学, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (40236013)
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Keywords | 統合失調症 / 認知機能 / 統合失調症認知評価尺度 / 事象関連電位 / 抗精神病薬 / 意味記憶 / 記憶の組織化 |
Research Abstract |
統合失調症警告期の新しい客観的・生物学的診断法の開発を目的として、短時間で施行可能な神経心理検査で測定できる認知機能障害のパターンや事象関連電位(ERP)による脳機能画像所見などを検討した。今年度は特に以下の所見を得た。 1)初発精神病患者を含む統合失調圏疾患を有する患者における認知機能の評価を、申請者らが作成した統合失調症認知評価尺度(SCoRS)日本語版(SCoRS-J)を用いて行った。その結果、SCoRS-Jの評価者得点はこれらの患者において予測される認知機能障害を鋭敏に検出できることが示され、同尺度の臨床場面における有用性が示唆された。 2)第二世代抗精神病薬であるペロスピロンによる治療の、統合失調症におけるP300電流密度の三次元的分布に対する影響をLow Resolution Electromagnetic Tomography(LORETA)による解析を用いて検討した。また、社会的認知機能の変化との関連も併せて検討した。結果として、6ヵ月間のペロスピロン投与により、統合失調症患者の左側前頭前皮質におけるP300電流密度の増加を認めた。さらに、対応する誘導電極におけるP300振幅の増加の程度は、スクリプト課題で測定される社会的認知機能の改善の程度と有意な正の相関を示した。以上の所見は、抗精神病薬を用いた治療が、統合失調症の社会性の障害を改善する機序を、電気生理画像的に説明する初めての報告である。 3)高次認知機能である意味記憶の組織化について語流暢性課題を用いて測定し、統合失調症における障害を日本語話者・トルコ語話者間で比較検討した。クラスター分析を用いた結果、日本語話者統合失調症患者の意味記憶構造は、日本語話者健常者よりもトルコ語話者統合失調症患者に類似することが示された。以上より、統合失調症の意味記憶障害は使用言語や文化的背景の影響を受けず、同疾患の中核的な特徴であることが示唆された。
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Research Products
(6 results)