2008 Fiscal Year Annual Research Report
ストレス脆弱性モデルラットの情動記憶障害に対するクロザピンの薬理学的効果の解析
Project/Area Number |
19591376
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
石郷岡 純 Tokyo Women's Medical University, 医学部, 教授 (80142412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲田 健 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90365164)
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Keywords | 恐怖条件づけ / ドパミン / マイクロダイアリシス / 抗精神病薬 / クロザピン |
Research Abstract |
【目的】統合失調症の情動障害に対する抗精神病薬の効果をモデル動物で検討した。メタンフェタミン(MAP)慢性処理ラットに、恐怖条件刺激(CS)を負荷すると、情動記億の中枢である扁桃体でのドパミン(DA)放出が亢進し、ストレス脆弱性の生化学的マーカーであると思われる。 【試料と方法】8週齢の雄性SD系ラットに、脳定位手術により左扁桃体にガイドカニューレを挿入する。CSとして80dbの連続音の直後に2mAの電気的フットショックを暴露し恐怖条件付けを行う。その後、吸入麻酔下でマイクロタイアリーシスプローーブを左扁桃体に挿入、固定する。微小透析を施行し、高速液体クロマトグラフィで経時的にDAを定量する。CS暴露以前に、D2受容体アンタゴニストであるhaloperidol(HAL)、clozapine(CLZ)とD2受容体パーシャルアゴニストであるaripiprazole(APZ)を投与する。 【結果】HALとCLZは、扁桃体での細胞外ドパミンの基礎放出量を上昇させた。CLZはHALより最大上昇率が有意に高かった。APZは基礎放出量を減少させた。すべての薬剤でCS後のドパミン放出が抑制された。恐怖反応としてのすくみ行動は、いずれも抗精神病薬によっても改善しなかった。 【考察】抗精神病薬は、ドパミン伝達を遮断するだけでなくドパミンの基礎放出量の調節作用もあることを解明した。これは、ドパミン神経のシナプス前受容体に作用した結果と思われる。さらに、抗精神病薬は、恐怖刺激に対するドパミン神経の反応を抑制することを発見した。この機序は不明であるが、抗精神病薬の薬理作用であり、さらに恐怖記憶の再強化を抑制する可能性がある。今後はこの仮説を証明すべく、記憶の再強化におけるすくみ行動の測定、ドパミン神経が投射する標的組織における恐怖刺激に対する応答を免疫組織学的手法や電気生理学的手法によって検討したい。
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Research Products
(1 results)