2008 Fiscal Year Annual Research Report
血管型一酸化窒素合成酵素遺伝子多型のうつ病の病態への影響
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19591385
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
吉村 玲児 University of Occupational and Environmental Health, Japan, 医学部, 准教授 (90248568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 純 産業医科大学, 医学部, 教授 (40148804)
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Keywords | 一酸化窒素 / 脳由来神経栄養因子 / うつ病 |
Research Abstract |
うつ病患者で血中NOx濃度やそれらへの抗うつ薬治療さらにeNOS遺伝子多型の影響などに関して検討した。対象は産業医科大学病院神経精神科の外来および入院患者103例であり(性別M/F:41/62,年齢44±13yr)、DSM-IVの大うつ病性障害の診断基準を満たしていた。また健常群は性別と年齢を一致させた104例(性別M/F:37/66,年齢39±16yr)である。抑うつの評価はHamilton Rating Scale for Depression 17項目(HAMD)を用いて行った。うつ病群のうちparoxetine投与群20例とmilnacipran投与群20例は薬物投与4週間、8週間後にも採血を行なった。また、eNOSの3つの遺伝子多型をgenotypingした。さらに、動脈硬化の指標としてABIも測定した。(1)血中NOx濃度は健常群で23.8±3.8μM、うつ病群で15.4±2.1μMであり、うつ病群で有意に低下していた(p<0.01)。(2)HAMD得点と血中NOx濃度との間には有意な負の相関が認められた(r=-0.556,p<0.001)。(3)うつ病群の内、自殺念慮有群の血中NOx濃度は14.3±1.3μM自殺念慮無群では16.7±2.9μMであり、自殺念慮有群で有意に低値であった(p=0.034)。(4)paroxetine群、milnacipran群では薬物投与前血中NOx濃度に有意差は認められなかったが、milnacipran群では投与4週間後で1.5倍、投与8週間後で1.8倍の増加が認められたのに対しparoxetine群では有意な変化はなかった。(5)うつ病群と健常群とでABIの差はなかった。(6)健常群でもうつ病群でもABIと血中NOx濃度に関連は無かった。(7)eNOS遺伝子多型(T-786C,G894T,intron 4VNTR)に関しては健常群、うつ病群でその分布に有意差は認められなかった。さらにHAMD得点との関連もなかった。(8)うつ病患者では血中NOx濃度が低下しており、さらに抑うつ症状の程度とも関連していた。 (9)うつ病群に内、自殺念慮を有する患者では、さらに血中NOx濃度が低値であった。(10)paroxetineとmilnacipranとでは血中NOx濃度に対する作用に相違があり、血中NOx濃度の増加にはノルアドレナリン神経が重要な役割をしている可能性も考えられる。(11)うつ患者でABIの変化はなく、ABIと血中NOx濃度に関連がなかった。(12)eNOSの3つの遺伝子多型とうつ病や血中NOx濃度との間には関連が無かった。
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