2009 Fiscal Year Annual Research Report
血管型一酸化窒素合成酵素遺伝子多型のうつ病の病態への影響
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19591385
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
吉村 玲児 University of Occupational and Environmental Health, Japan, 医学部, 准教授 (90248568)
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Keywords | 一酸化窒素 / 脳由来神経栄養因子 / うつ病 / ミルナシプラン / 血管由来一酸化窒素合成酵素 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
うつ病患者で血中NOx濃度やそれらへの抗うつ薬治療さらにeNOS遺伝子多型の影響などに関して検討した結果、(1)血中NOx濃度は健常群で23.8±3.8μM、うつ病群で15.4±2.1μMであり、うつ病群で有意に低下していた(p<0.01)。(2)HAMD得点と血中NOx濃度との間には有意な負の相関が認められた(r=-0.556,p<0.001)。(3)paroxetine群、milnacipran群では薬物投与前血中NOx濃度に有意差は認められなかったが、milnacipran群では投与4週間後で1.5倍、投与8週間後で1.8倍の増加が認められたのに対しparoxetine群では有意な変化はなかった。(4)うつ病患者では血中NOx濃度が低下しており、さらに抑うつ症状の程度とも関連していた。(5)paroxetineとmilnacipranとでは血中NOx濃度に対する作用に相違があり、血中NOx濃度の増加にはノルアドレナリン神経が重要な役割をしている可能性も考えられた。(6)eNOSの3つの遺伝子多型とうつ病や血中NOx濃度との間には関連が無かった。更に抗うつ薬慢性投与のNOやBrain-derived neurotrophic factorへの影響の検討も加えた。すなわち、ミルナシプランがマウス脳内のnNOS活性、NOx、BDNF mRNA、BDNF発現に与える影響について検討した。9週齢オスのC57BL/6Jマウスをミルナシプラン3mg/day、10mg/day、生理食塩水(対照群)投与の3群に分け、腹腔内へ単回および慢性(14日間)投与した。断頭後、大脳皮質、中脳、海馬に分離した。NOS assay kitによりnNOS活性、グリース法によりNOx、RT-PCRによりBDNF mRNA、Western blotting法によりBDNF発現量を測定した。結果は慢性ミルナシプラン(10mg/day)投与群では対照群(NOx:1.28±0.19mmol/L/g)に比較して、大脳皮質のNOS活性(27.09±7.40% of control,P<0.01)、NOx(0.82±0.09mmol/L/g,p<0.05)が有意に減少し、BDNF mRNA(191.70±16.92% of control,P<0.01)、BDNF蛋白(127.04±15.86% of control,P<0.05)が有意に増加した。ミルナシプラン(3mg/day)投与群ではNOS活性、NOx、BDNF mRNA、BDNF蛋白発現量に有意差がなかった。NOxは海馬でも同様に有意差(0.95±0.06mmol/L/g,P<0.05)を認め、中脳では有意差は認めなかった。単回ミルナシプラン(10mg/day)投与群の大脳皮質と対照群の間のNOS活性に有意差は認めなかった。大脳皮質、中脳、海馬ともにミルナシプラン(10mg/day)投与群と対照群の間のNOxに有意差はなかった。大脳皮質上清を用いたin vitroの検討では、ミルナシプラン(0.1-0.3μg/m)のNOS活性への直接作用はみられなかった。
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