2009 Fiscal Year Annual Research Report
放射線と血流遮断剤で腫瘍内の抗癌剤AUCを増大する新規放射線療法の開発
Project/Area Number |
19591449
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堀 勝義 Tohoku University, 加齢医学研究所, 准教授 (00143032)
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Keywords | 放射線療法 / 抗癌剤 / 腫瘍血流遮断 / 治療効果増強 |
Research Abstract |
これまでの研究で、放射線照射後数日以内に腫瘍血流が著しく増量し、腫瘍循環機能が著明に改善することを示してきた。このことから、照射後の血流増量時に抗癌剤を投与すれば、腫瘍への抗癌剤の到達量を高めることができる。しかし循環機能の改善は、同時に、抗癌剤の腫瘍からの消失速度を速めることにもなる。そこで、抗癌剤を到達させた後、腫瘍血流遮断を行い、抗癌剤の有効濃度をより長く維持しようと試みた。実験の結果、放射線照射3~4日後に、低分子の蛍光物質、蛍光抗癌剤を静脈内投与すると、予想どおり腫瘍への到達量は高まったが、腫瘍からの消失速度もまた約2倍の速さとなった。薬剤の到達がピークに達したところで腫瘍血流を遮断すると、消失速度はやや低下したが、薬剤は腫瘍内に長く留まらず、AUCの増大はわずかであった。低分子の場合は、convectionを止めても、diffusionによって腫瘍組織から抜けていくためと思われる。一方、高分子の薬剤(高分子ミセルやアルブミン)も、照射後に腫瘍組織への移行性(組織内濃度のピーク値)は著しく高まった。高分子においても、腫瘍からの消失速度は速くなったが、低分子に比べて、その速度はゆっくりとしたものであるため、AUCは顕著に拡大した。腫瘍組織に到達させた抗癌剤を、血流遮断により腫瘍内に留めようとする治療戦略は、高分子抗癌剤でより効果的であることがわかった。また、本研究で、照射後次第に増量する腫瘍血流が最大値に達する直前に血流遮断を行えば、抗癌剤の使用なしで、ラット難治癌の吉田腹水肉腫を高い頻度で完全治癒させることができるという重要所見を得た。
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