2009 Fiscal Year Annual Research Report
放射線のCD80発現増強とアポトーシス制御因子へのプロテオーム解析
Project/Area Number |
19591466
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
石川 文雄 Toho University, 医学部, 講師 (10130345)
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Keywords | 放射線 / CD80 / super-induction / 抗原提示 / サイクロヘキシミド / NF-kB転写因子 / A20-HL細胞 / Lynチロシンキナーゼ |
Research Abstract |
放射線照射が細胞内シグナル伝達系を活性化し、アポトーシス以外にも様々な生理活性を誘導することが知られている。事実、これまでに私達は、抗原提示細胞への高線量率低線量の放射線照射が抗原情報伝達を担う副刺激分子CD80発現を促し、抗原提示機能が増強されることを明らかにした。さらに、蛋白合成阻害剤サイクロヘキシミド(CHX)にもCD80発現増強が認められことを発見した。しかし、両者のCD80発現増強に対するシグナル伝達系阻害剤や処マウスBリンフォーマ細胞に対するアポトーシス誘導に、より多くの線量を必要とする放射線適応応答能に差が認められた。そこで今回私達は、放射線と蛋白合成阻害剤CHXのCD80発現増強と放射線抵抗性を示す放射線適応応答の成立機序を検討した。初めに、CHXのCD80発現増強作用が新規の蛋白合成を伴うものなのかを調べた。その結果、発現増強がみられるCHXの1.25μM濃度条件下で蛋白合成能はほぼ8割近くに抑制されていた。CD80 mRNA合成をNorthern blotで解析したところ、蛋白合成が阻害されているにも関わらずその発現は増強していた。さらに、CD80発現を制御するNF-kB転写因子活性も亢進していた。 一方、マウスBリンフォーマ細胞(A20-HL)への200Gy放射線照射で速やかにアポトーシスが誘発された。しかし、CHX処理でCD80発現増強がみられたA20-HL細胞では7割り近くがアポトーシスに抵抗性を示していた。この抵抗性獲得はNF-kB転写因子の阻害剤添加で消失した。次に、アポトーシス抵抗性を示すシグナル分子を解析したところBcl-2発現増強が検出された。 以上の結果から、CHXのCD80発現誘導は大部分の蛋白合成能が阻害される条件下で起る特徴的なものであった。さらに、NF-kB転写因子の活性化はアポトーシス抵抗分子Bcl-2発現を誘導し、放射線へのアポトーシス抵抗性獲得に関与することが示唆された。
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