2008 Fiscal Year Annual Research Report
劇症肝炎における肝性脳症のメカニズムの解明と治療の確立を目指して
Project/Area Number |
19591477
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山本 智 Niigata University, 医歯学系, 助教 (30345508)
|
Keywords | 劇症肝炎 / 肝性脳症 / Metalloproteinase inhibitor / MMP-9 / Astrocyte |
Research Abstract |
昨年度までに、劇症肝不全患者の血清中において正常血清や肝硬変患者の血清に比較して、MMP-9が著明に上昇していること、そしてそのinhibitorであるTINP-1が低下していることをGelatin Zymographyを用いて確認している。これらより、壊死した肝臓内で産生されたMMP-9が末梢血液中に流出し、BBBに障害を加えることにより脳浮腫を伴う肝性脳症を引き起こし、そして、通常は相関して動くはずのMMP-9とTIMP-1動態に生じるアンバランスが劇症肝炎およびそれに随伴する肝性脳症を不可逆な状態に導く仮説とした。実際、マウス劇症肝炎モデルにおいて、MMP阻害薬:GM6001やMMP-9Abを投与することにより、脳におけるEvans Blue extravasationを抑制することができた。しかしながら、問題点が2つ残った。1)脳浮腫は本当に軽減されているか?これに関しては、GM6001とMMP-9Abによる抑制効果には、大きな差はなく、MMP-9以外のMMPによる効果も示唆される結果となった。そのため、劇症肝炎の脳における水分量の変化をspecific gravity methodを用いて、浮腫の程度を電子顕微鏡を用いて確認している。2)MMP-9以外のMMP(MMP-2)の関与も示唆された。これに関しては、劇症肝炎の肝と脳におけるMMP activityをIn situ Zymographyを用いて確認している。Preliminaryではあるが、マウス劇症肝炎モデルにおいて肝性脳症I度の肝においてMMP-9活性の増強が認められた。脳においては、全くMMP-9活性の増強はみられない様である。このことから、脳症I度で肝内で脳MMP-9が産生され、肝臓の壊死に伴い、血液中に放出されるため、血液中においては、脳症III度において最も活性が増強すると考えられた。MMP-9活性増強と脳症の進行は相関があり、脳症の原因として強く疑われるが、どのように作用しているかに関しては、BBBの構成蛋白の変化などを調べ、さらに解明していく必要がある。
|