2008 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪由来幹細胞の肝細胞特異的分化誘導における微小重力環境の影響
Project/Area Number |
19591492
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
山田 高嗣 Nara Medical University, 医学部, 助教 (20316061)
|
Keywords | 脂肪由来幹細胞 / 肝細胞 / 分化誘導 / 腸管 / 微小重力環境 |
Research Abstract |
今年度、我々は脂肪由来幹細胞から微小重力環境下に肝細胞を分化誘導するための準備実験として、以前から行なっているhanging drop culture (懸垂)培養系でのembryoid body (EB)を用いた、多能性を有する胚性幹(ES)細胞から肝細胞および腸管神経系・神経堤幹細胞への分化誘導に関する研究を行った。ES細胞は重力の影響を受けて、滴状培養液の先端に凝集し、胚様体を形成する。hanging dropにて6日間培養してEBを作製した後、outgrowth culture21日目にES細胞から蠕動運動能を有する腸管(ES-Gut)の分化誘導を確認した。また、ES-Gutの周囲に、肝細胞特異的に取り込まれるICG陽性の三次元構築をもつ細胞群を認めたため、RT-PCRで解析したところ、肝細胞markerであるalbumin, α-fetoprotein, transthyretin, α-1-antitrypsin, glucose-6-phosphataseおよび内胚葉マーカーであるHNF-3βの発現を示した。また、神経栄養因子であるGDNFやBDNFを添加することにより、腸管神経系の起源である神経堤幹細胞をES腸管壁内に分化誘導することも確認した。さらに、一定の条件下に無血清培養を行うことにより、神経堤幹細胞に特異的な遺伝子群(Slug、Snail、Pax3、Phox2b、Sox9、Sox10、Ret、GFRal、P75NTR)を発現する細胞を認め、GDNF添加下で培養すると、突起をもつ腸管神経(Ret^+/Sox10/p75^<low>)を分化誘導することができた。本研究結果は、発生学的に肝臓が原腸から分化することを考えると、脂肪由来幹細胞から微小重力環境下に肝細胞つくるという命題にとって大変重要かつ画期的な発見であると考えられる。現在、微小重力環境下に肝細胞の分化誘導を行い、重力が臓器分化誘導に及ぼす影響を検討中である。これらの研究成果は、第108回日本外科学会総会(2008)シンポジウム『細胞を用いた治療の臨床応用をめざして』および第7回日本再生医療学会総会(2008)で発表したほか、第20回日本小腸移植研究会(2008)では最優秀演題・研究奨励賞を受賞した。
|