2008 Fiscal Year Annual Research Report
未産・経産ラット乳腺のDNAメチル化状態の網羅的比較による乳癌予防標的の検索
Project/Area Number |
19591522
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
松岡 洋一郎 Kansai Medical University, 医学部, 准教授 (60219409)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
螺良 愛郎 関西医科大学, 医学部, 教授 (90098137)
上原 範久 関西医科大学, 医学部, 講師 (30368211)
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Keywords | 遺伝子 / 癌 / ゲノム / 病理学 |
Research Abstract |
本邦における近年の乳癌罹患者数の急激な増加に鑑み、有効な乳癌一次予防法の確立は医療費抑制の観点からも緊急かつ重要な課題である。MacMahonらによる広範な疫学研究によると、初回満期妊娠が若年齢であると乳癌発症を減少させ、20歳未満で満期妊娠を経験した女性は、未産婦に比して乳癌の発症は1/2である。経産(妊娠と出産)による乳癌の抑制は最も生理的かつ強力な一次予防効果であり、ゆえにその標的(遺伝子とその産物)ならびに分子基盤を解明することは未産婦へも応用し得る生理的かつ安全な乳癌予防法の確立に必須である。乳腺は性成熟期から本格的な発育・分化を始め、妊娠・出産を経て最終的な分化段階に至る。細胞分化は発現オン・オフ状態の遺伝子セットの組み合わせで規定され、さらにこの発現パターンは細胞世代を超えて安定的に伝達されることから、DNAメチル化を含むエピジェネティック機構の関与が示唆される。本年度は未産および経産ラット乳腺を用いて、生化学的、分子生物学的解析を実施した。その結果、経産乳腺でのMyc抑制因子Mntの発現上昇、Mnt-ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC1)複合体形成の促進がそれぞれイムノブロット法、免疫沈降法により認められた。すなわち、標的遺伝子プロモーター(E-box領域)上の転写抑制複合体が解離しないと考えられる。さらに、MNU投与前経産乳腺においてヒストンH3リジン9、リジン23のアセチル化亢進ならびにリジン18の脱アセチル化亢進が認められた。以上の事実は、乳癌抵抗性形質の'エピジェネティクス仮説'の妥当性を支持している。
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