2007 Fiscal Year Annual Research Report
食道癌における臓器特異性転移機序の解明と新しい癌転移抑制剤の開発
Project/Area Number |
19591561
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
竹内 裕也 Keio University, 医学部, 助教 (20265838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 雄光 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (20204878)
入野 誠之 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20445216)
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Keywords | 癌 / 転移 / 分子標的 |
Research Abstract |
食道扁平上皮癌の細胞株(TE1〜10)を用いて,real-time RT-PCRによりchemokine receptor CXCR4の発現解析を行った.また,発現が認められた細胞株を用いたLigand/Receptor相互作用を検討するため,Transwellを用いた遊走実験を行い,Ligandを加えた場合の遊走能の変化及び抗CXCR4抗体を用いたReceptor blockingによる効果を検討した.続いて1999年1月から2000年12月に当院で行われた根治術施行例のうち術前未治療食道扁平上皮癌患者45症例を選択し,そのparaffin検体を用いて抗CXCR4抗体を用いた免疫組織化学を行い,その臨床病理学的な関係について検討した.Real-time RT-PCRにおいて,10種中5種(50.0%)の細胞株においてCXCR4の発現が認められた.さらに,発現の多い細胞株(TE9)及び発現の認められない細胞株(TE1)を用いて遊走実験を行ったところ,Ligand(SDF-1α)を加えた場合,TE9の遊走能は最大29.7%の亢進が認められた.また,CXCR4の抗体を同時に添加した場合,40μg/ml以上の濃度において有意な遊走阻害効果が認められた.ただし,抗体濃度を濃くすると遊走能が元に戻るだけでなく細胞全体に遊走能が低下し,何らかの機序で有害な作用を及ぼしている可能性も示唆された.免疫組織化学においては,45例中18例(40.0%)においてその発現が認められた.さらに,CXCR4発現の有無に関して,T因子・N因子・M因子(肝肺骨転移)・組織型・リンパ管侵襲(ly)・静脈侵襲(v)に関して単変量解析を行ったところ,M因子のみ有意差が認められた.今回の検討で,食道扁平上皮癌においてもchemokine receptorが発現しており,食道癌の臓器特異性転移に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された.機能解析では,抗CXCR4抗体にてその遊走能が有意に抑制されており,癌転移を抑制できる可能性があると考えられた.
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