Research Abstract |
統合失調症は思春期から青年期に発症することが多く,全世界で生涯発症率が約1%と高率であり,その発症要因として遺伝的素因,環境的素因が大きく関与していることが報告されている。近年,統合失調症の発症を有意に上昇させる統合失調症感受性遺伝子(Schizophrenia susceptible gene)としてdysbindinが報告されたが,その機能は不明である。今回,我々は,統合失調症発症の分子生物学的メカニズムの解明を行うため,Yeast two-hybrid systemにより, dysbindinと結合する因子として新たにSNXを同定した。 SNXは,細胞内でendosomeからGolgi体への,細胞内小胞の輸送に関わる事が報告されている。我々は,まずPull-down assay法により, dysbindinとSNXが, in vitroで結合することを確認した。免疫沈降法により,dysbindinとSNXが哺乳類細胞内で結合し,細胞免疫染色法により, dysbindinとSNXが哺乳類細胞の細胞質内で共局在することを確認した。in situ hybridization法により, SNX5とdysbindinは,ラット脳の大脳皮質,海馬などに強い発現を認めた。以上のことから,統合失調症感受性遺伝子dysbindinは, SNXと結合して,統合失調発症に関係していることが示唆された。今後は,両者の結合の意義を解析することで,統合失調症の分子生物学的発症のメカニズムの解明に迫りたい。
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