2008 Fiscal Year Annual Research Report
ポストゲノム時代における脳腫瘍のエピジェネティクス解析による診断・治療の新展開
Project/Area Number |
19591669
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
夏目 敦至 Nagoya University, 医学部附属病院, 特任准教授 (30362255)
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Keywords | 脳腫瘍 / DNAメチル化 / MGMT / エピジェネティクス / パイロシークエンス |
Research Abstract |
本研究ではポストシークエンスを向かえた現在、ゲノム解析を踏まえ、脳腫瘍におけるエピジェネティクス解析の包括的な解析をおこない、腫瘍の本質的な解明することが目的である。 テモゾロミドによる治療効果(全生存期間、無増悪期間)はMGMTプロモータのメチル化の有無に相関すると報告されている。我々もMGMTプロモータのメチル化のアッセイとしてのmethylation-specific PCR (MSP)のシステムを立ち上げ、治療予後予測に役立てている。しかし、この方法は高感度なPCRを用いるために、腫瘍の不均一さ(heterogeneity)が問題となる。つまり、腫瘍内部に混在する血液や血管などの正常組織由来の遺伝子が否定できず、定量は不可能である。本研究では、pyrosequenceを用いてDNAメチル化を定量することを試みた。 Pyrosequence法は、MSPの不定量性を改良した、斬新な方法である。本法は、DNAをbisulphite処理し、非メチル化シトシンをチミンに変換することによってメチル化シトシンと非メチル化シトシンをあたかもSNPのように区別し、定量化する。Pyrosequencingは再現性に優れ、ハイスループットであるので一度に多くの検体が処理できる。MSPでは、メチル化の有無しか判定できないのに対し、Pyrosequencingの結果、グリオーマの腫瘍組織は0-90%にわたる広範囲なメチル化が起こることを認めた。基準値を設けるとMSPとの相関も認められた。さらに抗MGMT抗体による免疫組織染色との相関、テモゾロミドを投与したグリオーマ症例における予後との相関についても検討した。 本研究成果は、遺伝子の異常メチル化は分子時計(molecular clock)として前癌病変や癌の進展予測のための分子マーカーとして利用できる可能性があり、抗癌剤感受性の指標としてのMGMT遺伝子メチル化だけでなく、今後、腫瘍の個性を利用した抗癌剤の選択にメチル化の異常が取り入れられていくと考えられる。
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