2007 Fiscal Year Annual Research Report
神経因性慢性疼痛の形成に関与する情動関連神経機構の意義の解明
Project/Area Number |
19591736
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
池田 亮 Jikei University School of Medicine, 医学部, 助教 (20439772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 総夫 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20169519)
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Keywords | 扁桃体 / シナプス伝達 / 慢性痛 / 神経因性疼痛 |
Research Abstract |
疼痛は生態防御のために有用な警告機構ではあるが、慢性化し持続的になると、それ自体が有害な病態となる。この慢性痛成立には、痛みに付随する不安や不快感といった負の情動が主体となっているため、治療が困難になることが多い。昨年までに、脳内情動処理機構の一端を担う扁桃体(CeA)において、脊髄由来の侵害情報を伝達する橋外側脚傍核(PB)由来興奮性シナプス伝達に可塑性が生じることを、神経因性痺痛モデルを用いた実験で報告した。この神経ネットワークの可塑性の経時的変化を検討することは、慢性痛成立過程で生じている病態生理を解明することになると考え実験を行った。Wistar rat(P21〜P24)の左側L5脊髄神経結紮神経因性疼痛モデルを作製し、異痛症発現評価を行った。評価直後に麻酔下に断頭し、扁桃体を含む脳スライス標本を作製した。PBからの入力線維刺激によって誘発される興奮性シナプス後電流(eEPSC)をスライス内CeAニューロンからパッチクランプ法を用いて記録し、結紮をしないSham手術群と経時的変化の比較検討を行った。術後6時間では、結紮モデルのCeAから記録されたeEPSC振幅は、Sham手術群におけるそれよりも両側性に高値であった。術後1.5日では各群間に差はなくなったが、2日目以降に記録したeEPSC振幅は昨年までの結果と同様、結紮対側CeAのみ他群に比べて高値となった。過去に報告された急性疼痛モデル同様、術後6-8時間という亜急性期においてPB-CeAシナプス伝達増強が生じたが、その変化は術後1.5日を境に障害部位対側のみとなる新しい様式の可塑性を認めた。本実験のような長期痛覚亢進状態で生じる扁桃体内シナプス伝達増強の経時的変化は、慢性痛成立に関与する情動記憶固定化の一端を担っていると推察され、中枢神経をターゲットとした新たな治療法の開発に重要である。
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Research Products
(5 results)