2008 Fiscal Year Annual Research Report
神経因性慢性疼痛の形成に関与する情動関連神経機構の意義の解明
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19591736
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
池田 亮 Jikei University School of Medicine, 医学部, 助教 (20439772)
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Keywords | 扁桃体 / シナプス伝達 / 慢性痛 / 神経因性疼痛 |
Research Abstract |
痛みは、個体の警告信号として重要な感覚機構であるが、一旦慢性化し持続的になると、それ自体が不利益な病態となる。特に、臨床医学的問題となっている原因として、侵害受容なしに生じる負情動が病態の主体となり治療に難渋することがあげられる。これまでに脳内情動処理機構の一端を担う扁桃体(CeA)において、脊髄由来侵害情報を伝達する腕傍核(PB)由来興奮性シナプス伝達が疼痛依存的に増大する事実を神経因性疼痛モデルにおいて報告した。本年度は、この神経ネットワークの可塑的変化をシナプスレベルでより詳細に解明することを目的とし実験を行った。また情動記憶固定化が組織損傷改善後も生じているのか否かを確認するために、神経因性疼痛改善モデルの作製を試みた。 Wistar ratの左側L5脊髄神経結紮神経因性疼痛モデルを作製し、異痛症発現評価を行った。評価直後に断頭しCeAを含む脳冠状断スライス標本を作製した。 PBからの入力線維刺激によって誘発される興奮性シナプス後電流(eEPSC)をスライス内CeAニューロンからパッチクランプ法を用いて記録する際、人工脳脊髄液のCa^<2+>をSr^<2+>で置換することで、 asynchronous releaseを誘発し、単小胞性EPSC振幅の測定を行った。結果、右側単小胞性EPSC振幅は左側に比し有意に高値を示したが、その差はごくわずかであった。次に最大幅のallodynia応答閾値低下を認める術後1日目に、外科的処置による疼痛改善を試み、術後7日目の最終評価直後、他モデル群と比較検討を行った。これまでの結果と本実験結果より、神経因性疼痛で生じるシナプス伝達増強は、放出確率の変化ではなく同期的放出小胞数の増大が関与すると推察された。また今回作製し得た神経因性疼痛改善モデルに対し、更なる検討を加えることで、上位中枢における痛みの記憶・処理に関し新たな事実を見出せる可能性が出てきた。
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Research Products
(9 results)