2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経因性慢性疼痛の形成に関与する情動関連神経機構の意義の解明
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19591736
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
池田 亮 Jikei University School of Medicine, 医学部, 助教 (20439772)
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Keywords | 扁桃体 / 慢性痛 / シナプス伝達 / 神経因性疼痛 |
Research Abstract |
痛みは、警告信号として重要な感覚機構であるが、一旦慢性化し持続的になると、それ自体が不利益な病態となる。治療後も持続する患者の主観的な痛みとして、不安や不快感などの「負情動」が一つの大きな要因となっていることは否定できない。これまでに脳内情動処理機構の一端を担う扁桃体(CeA)において、脊髄由来侵害情報を伝達する橋腕傍核(PB)由来興奮性シナプス伝達が疼痛依存的に片側性に増大する事実を神経因性疼痛モデルで報告した。また昨年度までの実験で、この神経ネットワークの可塑的変化をより詳細に検討した結果、単小胞性興奮性シナプス後電流(EPSC)振幅には大きな変化を見出すことが出来なかった。これよりシナプス増強の要因は、放出確率の変化ではなく、同期的放出小胞数の増大が推察された。そこで本年度は、シナプス伝達増強メカニズムに関与する構造的変化は単線維シナプス内での変化なのか線維の増加によるものか明らかにするために実験を行った。Wistar ratの左側L5脊髄神経結紮神経因性疼痛モデルを作製し、異痛症発現評価を行った。評価直後に断頭しCeAを含む脳冠状断スライス標本を作製した。スライス内CeAニューロンからパッチクランプ法を用いて記録する際、微小双極刺激電極を作成し、PB由来求心路を微弱電流で刺激するminimal stimulation法を用いて単線維刺激を行った。結果、右側単線維性EPSC振幅は左側に比し有意に増大していたため、増強の原因は単線維シナプス内の放出小胞数およびそれに呼応した受容体の増加から生じていることがわかった。以上より、正常の状態から神経因性疼痛が成立すると、脳内疼痛関連情動神経機構のシナプスでは、1活動電位で放出される小胞数の増加と受け手側の受容体数の増加という構造的変化が生じ、これがシナプス伝達増強を固定化し、急性痛とは異なる慢性痛の病態を形成するものと推察された。
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Research Products
(5 results)