2008 Fiscal Year Annual Research Report
脳内における不安と痛みの相互作用機序解明および新しい慢性疼痛治療法の開発
Project/Area Number |
19591783
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
山崎 光章 University of Toyama, 医学薬学研究部, 教授 (70158145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 利佳 富山大学, 医学薬学研究部, 助教 (10345572)
成田 年 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (40318613)
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Keywords | enriched environment / neuropathic pain / nerve-ligated mice / doublecortin / NeuroD / dentate gyrus / hippocampus / neurogenesis |
Research Abstract |
本年度は、昨年度の研究成果からマウスで感覚・運動刺激の豊富な環境下における飼育を行うと中枢神経新生が生じ、これが神経障害性疼痛と密接に関連するのではなかとの考えに至り、その検討を行った。 感覚・運動刺激が豊富な環境(enriched environment:EE)下で自己複製能と多分化能を有する海馬神経の新生変化に対する慢性疼痛の影響について検討した。EE飼育群と通常飼育群について、nestin(神経幹差イボに特異的に発現する中間系フィラメントの細胞骨格蛋白質分子)、doublecortin(神経芽細胞や未熟な神経細胞に特異的に発現する微小管タンパク)、NeuroD(神経への分化に促進的に働く転写因子)、BrdU(5-bromo-2'-deoxyuridine:細胞増殖のマーカー)の蛍光免疫染色活性を測定した。また、BrdUとNeuN(神経細胞のマーカー)の局在について検討した。 (1)EE飼育群では、通常飼育群に比較して、海馬歯状回顆粒細胞下層におけるnestin免疫活性に差はなかったが、doublecortin免疫染色活性、NeuroD陽性細胞数、BrdU陽性細胞数は有意に増加した。(2)またBrdU陽性細胞の多くがNeuroDと共局在を示した。さらに3)EE飼育により認められた。doublecortinおよびNeuroD陽性細胞数の増加は、坐骨神経結紮により有意に抑制された。 以上より、EE飼育されたマウスでは、海馬における神経新生が促進されること、神経障害性疼痛がEEによる神経新生促進作用を抑制することが示された。これらのことは、慢性疼痛に対する神経新生を考慮した治療戦略の手がかりとなりうる重要な所見であり、今後の臨床への応用が充分に期待される。
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