2007 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性全身麻酔薬の副作用の分子機構:モーター蛋白1分子レベルでの解明
Project/Area Number |
19591792
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮本 善一 Osaka University, 医学系研究科, 助教 (70278844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 雅祥 京都大学, 理学系研究科, 助教 (10346075)
岩根 敦子 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (30252638)
柳田 敏雄 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (30089883)
真下 節 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60157188)
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Keywords | 揮発性麻酔薬 / 麻酔メカニズム / モーター蛋白 / キネシン / 微小管 |
Research Abstract |
本年度は細胞内モーター蛋白キネシン-微小管系の運動再構成モデル(多分子系)を用い、揮発性麻酔薬セボフルラン・イソフルランがキネシン運動能に与える直接作用を調べた。蛍光顕微鏡を用いたキネシン・微小管のin vitro運動再構成系で、カバーガラス表面に吸着させるキネシン濃度を調整することにより、蛍光標識された微小管の80-90%に(キネシンに沿った)滑り運動が認められるような実験系を作成した。この系を5%セボフルランで飽和させたところ、大部分の微小管が滑り運動を停止した。また、この系のセボフルランを洗い流すことにより、再び大部分の微小管が滑り運動を再開した。もう1種の揮発性麻酔薬イソフルランについても、実験系を4%イソフルランで飽和させることにより、大部分の微小管が滑り運動を停止することが確認された。以上から、揮発性麻酔薬セボフルラン・イソフルランは細胞内モーター蛋白キネシンの運動能を直接阻害すること、またセボフルランの阻害作用については可逆性が認められることが確認できた。 キネシンスーパーファミリー蛋白は神経軸索・神経突起の伸長制御や記憶・学習に重要な役割を担っており、上記の現象は揮発性麻酔薬が神経発達過程における脳細胞の広範な障害を引き起こすメカニズムの一つである可能性が高い。次年度は上記の実験結果を確固たるものにするための実験に加え、同様の実験を別の細胞内モーター蛋白であるアクトミオシンのin vitro運動再構成系についても行う予定である。これによって揮発性麻酔薬が細胞内モーター蛋白の運動能全般に直接阻害作用を有することが示されれば、揮発性麻酔薬の種々の副作用の分子メカニズムを一元的に解明することができるであろう。さらに未だ知られていない揮発性麻酔薬の生体作用の発見や新しい臨床応用の発見にもつながる可能性があると期待される。
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