2008 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性全身麻酔薬の副作用の分子機構:モーター蛋白1分子レベルでの解明
Project/Area Number |
19591792
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮本 善一 Osaka University, 医学系研究科, 助教 (70278844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩根 敦子 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (30252638)
柳田 敏雄 大阪大学, 生命機能研究科, 教授 (30089883)
真下 節 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (10110785)
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Keywords | 揮発性麻酔薬 / 麻酔メカニズム / モーター蛋白 / キネシン / 微小管 |
Research Abstract |
本年度はまず、昨年度preliminaryな結果が得られた揮発性麻酔薬セボフルラン・イソフルランがモーター蛋白キネシン運動能に与える直接阻害作用を確固たるものとするため、キネシン-微小管系の運動再構成モデル(多分子系)を用い、再実験・解析を行った。揮発性麻酔薬非存在下でほぼ全ての微小管に滑り運動が認められるin vitro motility assayの系を、セボフルラン(5%)あるいはイソフルラン(4%)で平衡させたbufferで灌流したところ、大部分の微小管の滑り運動が停止した。次にこの系を麻酔薬を含まないbufferで再灌流したところ、8割以上の微小管で滑り運動の再開が認められた。灌流前後の微小管の滑り運動速度に有意差は認められなかった。以上から、セボフルラン・イソフルランはいずれもキネシン運動能を直接・可逆的に阻害することが明らかとなった。 次に、揮発性麻酔薬による上記の阻害作用がキネシンATPase活性を阻害することによるものか否かを検討するため、揮発性麻酔薬存在下・非存在下においてmicrotubule-activated kinesin ATPase活性測定を行った。揮発性麻酔薬存在下でのATPase活性測定は困難を極めたが、MESG/PNP法を改変することにより測定に成功した。結果、セボフルラン(5%)あるいはイソフルラン(4%)存在下において、kinesin ATPase活性は麻酔薬非存在下と同等のVmax値を示し、セボフルラン・イソフルランによるキネシン運動能阻害作用はATPase活性を介するものではないことが示された。これは研究代表者らが以前局所麻酔薬について示した結果と同等の結果であり、揮発性麻酔薬も局所麻酔薬と類似のメカニズムでキネシン運動能を阻害することが明らかとなった。 以上の研究成果は、第56回日本麻酔科学会学術集会(2009年5月)にて発表予定である。
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