2008 Fiscal Year Annual Research Report
吸入麻酔薬による新生児期の全身麻酔の安全性の再評価
Project/Area Number |
19591802
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
植木 正明 Kobe University, 医学部附属病院, 准教授 (20213332)
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Keywords | 吸入麻酔薬 / 脳高次機能 / 新生仔マウス |
Research Abstract |
生後1週問目のラットにNMDA receptorのantagonistである吸入麻酔薬や鎮静剤の投与がその後の脳の神経変性を引き起こし、その後の学習効果が生じると報告された。研究者は前年度の研究で、吸入麻酔薬であるイソフルランによるマウスへの暴露による脳の高次機能への影響はイソフルランの暴露時間と時期に関係することを報告した。今年度は、我々は低酸素性脳虚血障害時の軽減作用があると報告されているEPOが生後7日目のマウスに対する6時間のイソフルラン暴露後の脳の神経細胞の変性および空間認知記憶学習障害を軽減できるかどうかを検討した。 日齢7日のddN系マウスを用いた。EPO50000U/kg投与後に1%イソフルランに6時間曝露した群(EPO群)と生食投与後に1%イソフルランに6時間暴露した群(CTRL群)とに分けた。生後8週間後に8方向迷路学習を行い、脳の病理組織学的検討を行った。8方向迷路学習は8方向の通路の先端に餌を置き、既に餌を取り終えた迷路に入った場合を誤選択と定義し、施行は一日一回四目問連続して行い、最初の8選択における誤選択数に対する%変化で評価した。病理組織学的検討は、HE染色により脳の海馬領域の神経細胞の変性の有無を調べた。 空間認知記憶学習についてはEPO群で有意に誤選択が改善し、脳病理組織学的にはCTRL群では海馬領域とりわけ歯状回領域を中心に神経細胞の萎縮などを認めたが、EPO群では少なかった。今回の結果は、吸入麻酔薬による新生期のマウスの脳の発達機能障害を軽減する可能性が示唆された。今後はEPOの投与量や投与時期に対する検討が必要である。 これらの結果をまとめて、論文を投稿中である。
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