2008 Fiscal Year Annual Research Report
間質細胞内TGFβ/BMPシグナルに制御される前立腺の異常増殖機構
Project/Area Number |
19591841
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
石井 健一朗 Mie University, 大学院・医学系研究科, 助教 (90397513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉村 芳樹 三重大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90179151)
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Keywords | 間質細胞 / TGFβ / BMPシグナル / 細胞分化 / 前立腺 / 肥大症 / 癌 / 平滑筋細胞 / 筋線維芽細胞 |
Research Abstract |
本研究は、前立腺の異常増殖性疾患(肥大症や癌)が起こる原因の1つに、TGFβ/BMPシグナルに制御される平滑筋細胞の脱分化や筋線維芽細胞の誘導があると考え、間質細胞内TGFβ/BMPシグナルを人為的に、かつ特異的に制御することを目的としている。 本年度は、市販のヒト前立腺間質細胞PrSCを用いて、その性状を解析した後、サイトカイン(TGFβ,sonic hedgehog;SHH)、ステロイドホルモン(DHT,E2)、神経伝達物質(フェニレフリン;PE)刺激による細胞増殖や細胞分化の変化を検討した。 まず、間質細胞特異的な遺伝子群の網羅的発現解析から、PrSCはvimentin,collagen,tenascin-C(TN-C),αSMA陽性の線維芽細胞>筋線維芽細胞であって、myosin,desmin陽性の平滑筋細胞ではないことが示された。次に、細胞増殖については、PEのみが増殖刺激作用を示し、TGFβ処理群は濃度依存的に増殖を低下させた。分化マーカーの発現については、TGFβ処理でcollagen,TN-C,αSMA mRNAが上昇、PE処理ではcollagen mRNAが上昇したものの、SHHやステロイドホルモンでは何の変化も観察されなかった。 以上より、間質細胞内TGFβ/BMPシグナルを特異的に刺激すると筋線維芽細胞の性質を増強させることが明らかになった。肥大症や癌周囲の間質では平滑筋細胞が減少し、代わりに上皮細胞の増殖を刺激する筋線維芽細胞が優位になっていることから、TGFβ阻害剤により筋線維芽細胞への分化誘導を阻止することが、肥大症や癌の発生や進展を抑える新たな治療法の確立に寄与すると考えられた。
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