2008 Fiscal Year Annual Research Report
マウス腎癌ミニ移植モデルにおけるメカニズムの解析と抗腫瘍効果の増強に向けた検討
Project/Area Number |
19591856
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江藤 正俊 Kyushu University, 大学病院, 講師 (90315078)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立神 勝則 九州大学, 大学病院, 助教 (90380617)
吉開 泰信 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (90158402)
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Keywords | renal cell carcinoma / bone marrow transplantation / mixed chimerism / tumor antigen peptide / GVT effect |
Research Abstract |
我々は申請時に報告したように、マウス腎癌に対するミニ移植モデルを確立している(Cancer Res,65:10032,2005)。今回、 C3H/Heマウスに同系の膀胱癌であるMBT2を皮下投与して、ドナーとしてAKR/Jの細胞を用いることで、マウス膀胱癌に対するミニ移植モデルを作成したところ、マウス膀胱癌に対しても有効であった。T細胞レセプター(TCR)を用いた本モデルのメカニズムの解析は、ドナー由来T細胞をThy1.1を用いてフォローし、レシピエントに反応する細胞としてT細胞レセプターVβ3をモニターすることで、末梢血および腫瘍局所におけるドナー細胞の実際の動きをより詳細に検討できた。その結果、ドナーリンパ球輸注直後にレシピエント反応性CD4陽性Vβ3陽性T細胞が著明に増殖し、レシピエント末梢血におけるIFN-γの濃度も上昇し、フローサイトメトリーによるIFN-γ発現細胞の解析ではドナー由来のCD4陽性T細胞が重要であることが判明した。さらに腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の解析では徐々にレシピエント由来のCD8陽性T細胞の割合が上昇し、レシピエント由来のMBT2特異的な細胞障害性T細胞の存在が確認できた。 腫瘍抗原ペプチドを用いたドナーの前感作による抗腫瘍効果の増強については、マウスの組み合わせは腎癌の場合と全く同じだが、癌細胞についてはマウス腎癌細胞(Renca)の腫瘍抗原ペプチドが同定されていないため、腫瘍抗原ペプチド(AH1:SPSYVYHOF)が同定されているマウス大腸癌colon26(CT26)を使用した。まずCT26に対するミニ移植の抗腫瘍効果を検討したところ、腎癌の場合と同様に確認できた。次に不活化(MMC処理)CT26あるいはAH1ペプチドでドナーを前感作し、この前感作ドナーのリンパ球輸注を行い、抗腫瘍効果の増強を検討したところ、いずれの前感作の場合も抗腫瘍効果の増強が確認できた。さらにはAH1ペプチドにて前感作されたドナーのリンパ球輸注を行って、腫瘍を拒絶したマウスの脾細胞をAH1ペプチドで再刺激して、CT26に対する細胞障害活性も検討したところ、CT26特異的な細胞障害活性が認められた。以上の結果は、ミニ移植において、アロの免疫反応に腫瘍抗原特異的な免疫反応を加えることで、抗腫瘍効果の増強が誘導できることを示しており、臨床応用の可能性が示唆された。
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