2008 Fiscal Year Annual Research Report
体外受精の着床率向上に向けた卵子機能マーカーの確立を目指して
Project/Area Number |
19591892
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
折坂 誠 University of Fukui, 医学部附属病院, 講師 (80324143)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 真 福井大学, 医学部, 助教 (40397279)
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Keywords | 生殖医学 / 不妊症 / 体外受精 / 卵子 / 卵胞 / GDF-9 / アンドロゲン |
Research Abstract |
近年の深刻な少子化社会において、不妊治療とくに体外受精など生殖補助医療に寄せられる期待は極めて大きい。体外受精で未解決な課題の1つに、「いかにして最も妊娠する確率の高い卵子あるいは受精卵を選択し、子宮に戻すことができるか?」という問題がある。すなわち、従来の形態学的な「見た目の良さ」に基づいた選別法では実際の着床(妊娠)率を約10〜15%しか反映しておらず、本当に妊娠の可能性が高い良質な卵子や受精卵を評価する方法が確立していない。私たちは、卵子の質を評価する方法を確立する目的で、卵子自身が産生する成長因子であるGDF-9という物質に着目している。卵子は、女性卵巣の卵胞という袋の中で発育しやがて排卵に至るが、卵子の質は排卵よりもかなり以前に既に決められている可能性がある。そこで私たちは、卵子由来のGDF-9が、早期の卵胞(前胞状卵胞)の発育や生存をコントロールするメカニズムの解明を試みた。 卵子由来のGDF-9は前胞状卵胞の発育を促進するが、GDF-9が働かないようにすると(ノックダウン)卵胞の発育は停止した。GDF-9は、卵胞の莢膜細胞に含まれるCYP17A1という酵素の発現を介して、男性ホルモン(アンドロゲン)の産生を促進した。アンドロゲンが働かない環境では、GDF-9による卵胞の発育促進効果が抑制されたことから、GDF-9は莢膜細胞からのアンドロゲン産生を介して、卵胞の発育を誘導するメカニズムが初めて明らかになった。さらに、GDF-9は卵胞の顆粒膜細胞が死んでいく(アポトーシス)のを防ぐが、GDF-9をノックダウンすると顆粒膜細胞のアポトーシスが誘導された。 このように、GDF-9が卵胞の生存や発育に極めて重要な物質であることから、卵子に発現するGDF-9の量、あるいはGDF-9によって制御されている様々な物質を調べることにより、卵子の質を評価できる可能性が推測された。
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Research Products
(2 results)