2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト胎盤トロフォブラスト合胞体化機序の解析:妊娠高血圧症候群発症病態の解明
Project/Area Number |
19591895
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
工藤 美樹 Hiroshima University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (80241082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
信実 孝洋 広島大学, 病院, 助教 (80403559)
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Keywords | 胎盤 / トロフォブラスト / 妊娠高血圧症候群 |
Research Abstract |
胎盤トロフォブラストのシンシチウム化のモデルであるヒト絨毛がん由来のBeWo細胞(forskolin添加により細胞内cyclicAMPレベルを上昇させるとシンシチウム化が誘導される)を用いて、ヒト内因性レトロウイルスのエンベロープ蛋白のひとつであるHERV-W env(syncytin)とその受容体として同定されたタイプDレトロウイルスレセプターであるASCT2がトロフォブラストのシンシチウム化に関与しているかどうかをRNA干渉法により検討した。 その結果、1) syncytinおよびASCT2に対するsiRNAをBeWo細胞に導入すると、いずれの分子の発現がRNAレベル(RT-PCR法で測定)および蛋白レベル(ウエスタンブロット法で測定)共に低下した。2) syncytinの発現レベルが低下した状態では、BeWo細胞のシンシチウム化(研究者らが開発したフローサイトメーターを用いたシンシチウム化の定量的測定系を用いて測定)は抑制された。また、トロフォブラストのシンシチウム化のマーカーであるhCGの分泌(エンザイムイムノアッセイ法で測定)も抑制された。 以上の結果より、syncytinおよびその受容体であるASCT2がトロフォブラストのシンシチウム化に関与していることが証明された。また、妊娠高血圧症候群の胎盤においては、トロフォブラストのシンシチウム化の障害とsyncytin発現の低下が報告されている。すなわち、妊娠高血圧症候群の胎盤では、syncytinの発現が何らかの機序により低下することによりトロフォブラストのシンシチウム化が障害されていると推測できる。syncytinの発現が低下する機序としては胎盤の低酸素状態が関与していると仮定して、低酸素状態におけるsyncytinおよびASCT2の発現の動態を解析する予定である。
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Research Products
(5 results)