2007 Fiscal Year Annual Research Report
プロタミンノックアウトマウスを用いた精子の核凝縮とRNA制御機構の解明
Project/Area Number |
19591898
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
竹田 直樹 Kumamoto University, 生命資源研究・支援センター, 助教 (90304998)
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Keywords | 精子 / ES細胞 / Protamine / 核凝縮 / haploinsufficiency |
Research Abstract |
本研究は生殖不全機構を解明するために、精細胞に特異的に発現する極めて特徴的なDNA結合タンパク質Protamine1(Prm1)に着目した。ヒトではPrmの発現低下が不妊に関係しているという知見が報告されており、ES細胞を用いた遺伝子相同組換え技術によりPrm1遺伝子を破壊した疾患モデル動物作製しその解析をおこなった。その結果、Prm1ノックアウトマウスの♂は、染色体の一方を破壊したヘテロの状態で不妊であり、無力精子症様の表現形を示した。精子運動能の著しい減退の主因がミトコンドリア膜電位の低下と鞭毛微小管構造の欠陥による事を明らかにした。また分子生物学的な解析により、Prm1の発現量が低下すると、共に協調的に機能するとされる成熟Prm2の減少も生じている事がわかった。これらは転写と翻訳において相互に影響を与えていると思われる。さらにこれらPrm類の発現低下が核凝縮不全を引き起こしている事を明らかにした。解剖学的には精巣では野生型精子と変異型精子に変化は認められない事から、精子の成熟過程においてこれらの異常が生じている事が推測される。コメットアッセイをおこなった結果、精巣上体頭部由来の精子に大きな変化は見られなかったが、精巣上体尾部由来においては変異マウス由来精子は損傷が激しい事が明らかになった。今後は化学剤などを用いて精巣上体通過時におけるストレスを模倣し、Prm類のDNA保護効果を検討する。本研究によりPrm1は精子の成熟過程において必須であり、またDNAの保護に重要であることが示唆された。
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